手作業では困難な細かい表現が可能に

デジタル作画は老眼対策にも最適という

インターネットの「バランス機能」

 デジタル作画とともに業田氏が有効な武器として活用するのがインターネットだ。以前はネットを利用して情報を集めることに抵抗があったというが、今は漫画制作に不可欠なツールとして重宝する。

「漫画を書くときは多くの資料が必要ですが、ネットなら無料で大量に検索できます。昔は書店や図書館に資料となる写真や絵を探しに行っては何冊も購入していたので、お金も時間もかかりましたが、ネットのおかげで節約と時短が進みました。これは漫画家にとって、結構大きなメリットです」

 昨今話題のフェイクニュースのように、ネットでは真偽不明の情報が氾濫して、それを信じる者と信じない者の間に深刻な分断が生まれることがある。だがその一方で、ネットには既成のしがらみがないゆえに自由で建設的な提案がみられることも少なくない。

 功罪半ばするネットの世界で、ベテラン作家の業田氏が注目するのは「バランス機能」だ。

「30年以上、政治漫画を書いてきましたが、新聞・テレビなど大手マスコミが流す情報しかなかった昔と今は状況が大きく異なります。例えばコロナをみても、テレビなど大手マスコミでは恐怖を煽り過ぎという印象がありますが、ネットを見ると、その“ブレーキ”となる意見に接することができます。

 昔はプロの学者など専門家の意見でないと価値がないと思っていましたが、いまは一般人が出す情報のほうに価値があると思います。体制の中にいる人は体制に批判的なことは言えず、むしろ一般人のほうが利害関係を気にせず真実を口にできるのではないでしょうか。もちろんネットにはウソや誹謗中傷もありますが、それでもネットを介すればいろいろな意見を知ることができます。どちらが正しいか判別できない案件も多いですが、少なくとも多くの意見に接することで、バランスを取ることができるはずです」

『それ行け!天安悶』『業田良家の「ガラガラポン!日本政治」』など、国際政治を題材に日本の安倍晋三元首相やアメリカのトランプ元大統領、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領など、アクの強いキャラクターが“いかにも”な言動をして読者をクスリとさせる風刺漫画でも知られる業田氏。そうしたネタ集めをする際もネットを深堀りするという。

「政治漫画を書くときは、できるだけネットを使って自分で情報を調べて、より真実に近いだろうという内容にするよう心がけています。すごく時間がかかるし、大手マスコミとは逆の立場になりやすいので批判されることもありますが、こればかりは仕方ありません。

 それと政治漫画では、できるだけ笑いを散りばめて、固くなりがちな内容を和らげることも心がけています。政治を普通の人の感覚に近づけて日常のものにすることは、漫画だからできることです」

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