新型コロナウイルスの感染拡大により、社会は変容した。多くの人と触れ合う生活から、できるだけひとりで過ごす生活へとシフトした人も多い。
そこで、コロナ以降の生活について語るべく、『自分をまるごと愛する7つのルール』(小学館新書)を刊行したばかりの下重暁子さん(84才)とジェンダー研究や介護研究のパイオニアである上野千鶴子さん(72才)の対談が実現した。
ここ最近、女性蔑視をめぐる話題が後を絶たない。今年2月に森喜朗元首相(83才)が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言し、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞任して以降も、3月26日には旧知の女性秘書を「女性というにはあまりにもお年」と発言し批判が殺到している。
またオリンピック開会式で、タレントの渡辺直美をブタに見立てる演出プランが提案されていたことが明らかに。企画を提案した統括役のクリエイティブディレクター・佐々木宏氏(66才)が辞任した。
ジェンダーギャップを解消し、多様性を認める社会へと変化するなかでの女性蔑視問題について、2人はどう考えているのだろうか──。
下重:森さんのような男性は、あの世代では珍しくない。ああいう男は普通にいた。昔もいまもあまり変わっていない。けんかが下手だから、私は右から左へ聞き流して無視しました。
上野:セクハラも、昔からあったのに表に出てこなかっただけ。実はセクハラって、構造的に大学で起こりやすいんです。教授には上司がいないし、密室だし、学生も逃げ隠れしにくいから。大学でセクハラを最初に告発したとき、何て言われたと思います?「まさか、最高学府の知性たるもの、そんなことをやるわけがない」って。知性じゃなくて痴性でしょ、って思いましたよ(笑い)。
下重:上野さんのような女性の活動もあって、最近は社会が変わってきましたね。声をあげる女性も増えました。
上野:森さんの辞任をはじめとする問題でも、いわゆる“わきまえない女”たちが声をあげて、社会が動いたと実感しています。これまで見過ごされてきたことに対して、きちんと「コレはダメなんだ」と待ったがかかった。やはり、おかしいこと、気になることは主張していかないと。
下重:一方で私が懸念しているのは、まるで言い訳のように、急に数合わせで女性を起用するようになったことです。ものすごく優秀だけど、男に利用されて、男の価値観で動く女性が増えている。
上野:“わきまえる女”を起用して、女性の頭数をそろえる動きがありますね。例えば、選択的夫婦別姓に反対している丸川珠代五輪担当相や、性暴力の被害者に対して「女性はいくらでも嘘をつく」と発言した杉田水脈議員。ああいう女性を起用して、男が腹の中で思っているけど口にするとまずいことを言わせて、使い捨てようとしていると感じる。女が女を叩くために、出世できる指定枠が用意されているように見えます。