若者のビール離れが指摘されて久しいが、「黒ラベル」と「ヱビス」が2枚看板のサッポロビールには、若年層のコアなファンも多いといわれる。実際、昨年までビール市場が16年連続で販売減と下降線を辿っている中、「黒ラベル」の缶商品は2015年から6年連続で販売数量が前年超えと、好調を維持している。その秘密はどこにあるのか──。今年3月にサッポロビール社長に就任した野瀬裕之氏(58)に聞いた。
──ビール離れが叫ばれる中、「黒ラベル」の売れ行きは好調ですが、2014年までは“低空飛行”を続けていました。
野瀬:過去を振り返りますと、1990年代以降は発泡酒、2000年代以後は新ジャンル(第3のビール)の商品が各メーカーから相次いで発売され、いわゆる狭義のビール商品が占めるウエートが下がっていったのがこの四半世紀です。
そうしたビール類ジャンルの多様化の中で、かつては当社も「黒ラベル」を軸にというより、一旦はビール、発泡酒、新ジャンルのバランスを取ってやっていくという経営判断があったわけです。
ただ、発泡酒や新ジャンルも大事な商品とはいえ、われわれの祖業はやっぱりビールであって、「黒ラベル」や「ヱビス」という重要なブランドをしっかりと後世に残していくことがお客様のためにもなりますし、われわれにもそういう気持ちが強かったんです。
そこで、改めて「黒ラベル」に注力しようと決めたのが2010年でした。それまでの20年間は、「黒ラベル」をど真ん中に置いた戦略は取っていなかったし、「黒ラベル」に若干元気がないことを、会社自ら認めてしまっていた歴史があったことは否めません。