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コロナ禍で変わる理想のご臨終「苦しくない死に方」を実現するために

日本人の死に方はどう変化している?(イメージ)

日本人の死に方はどう変化している?(イメージ)

【NEWSポストセブンプレミアム記事】

「死」は誰にでも平等に訪れる。しかし、「死に方」はさまざまだ。もだえ苦しみながら死を迎える人もいれば、眠るように息を引き取る人もいる。どんな病気が「痛い死に方」になり、どういう状態であれば「苦しくない死に方」になるのか。そして、どうすれば“穏やかな最期”を迎える可能性が増すのか。最新の知見を探った。

「一瞬の激痛」も「長い苦しみ」も避ける方法はあるのか

 亡くなった人に「どのくらい痛かったか」を聞くことはできないが、“死に至る病”を発症し、生還した人の話を聞くと、「激しい痛み」を体験しているケースがある。

 2020年11月、くも膜下出血を発症した都内の40代会社員が語る。

「朝起きてトイレで力んだら、“後頭部を金属バットで殴られたような激痛”に襲われました。慌てて扉を開けてその場に倒れ込み、薄れゆく意識の中でひどい頭の痛みと心臓がバクバクしたことだけを覚えています。

 幸い、妻が呼んだ救急車で緊急搬送され、気づいた時には病院のベッドの上。回復後に医師から『もう少し病院に来るのが遅かったら危なかった』と言われてゾッとしました。今でもあの痛みを思い出すと恐怖が蘇ります」

 大動脈解離を経験した千葉県の60代男性は、2年前の冬の朝、自宅でテレビを見ていた時に突然、背中に「バリバリバリ」という音が鳴り響いた。

「“あれ、何だ?”と思う間もなく、背中から全身にかけて味わったことのない痛みがドーンと駆け巡りました。体を真っ二つに引き裂かれたような感じがしてその場に立っていられず、仰向けになって『痛い、痛い、死ぬ、死ぬ』とうめきながら気を失いました」

 妻の119番通報で病院に担ぎ込まれ、3時間にわたる手術で一命をとりとめたが、この男性は「あのまま死んでいたら、最悪の死に方でした」と振り返る。

 長尾クリニック院長の長尾和宏医師が、死に至る病気の痛みと苦しみについてこう分類する。

「そもそも痛みが生じる病気には、慢性のものと急性のものがあります。慢性で死に至る痛い病気の代表はがん。一方、くも膜下出血や大動脈解離といった血管系の病気は突然に発症し、そのまま死に至るケースもあります」

 急な痛みに襲われる病気の代表格ともいえるくも膜下出血は、年間約11万人が亡くなる脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)のうち、およそ1割を占める病気だ。発症すると約3分の1が死亡するとされる。

「脳の表面を走る動脈が破裂して出血する病気です。突然頭全体に経験したことがない激しい痛みを感じ、強い吐き気をもよおす。意識がなくなり、そのまま死に至ることもあります」(長尾医師)

 大動脈解離も同様に“痛い死に方”と考えられている。

「背中の前または横を走る大動脈の壁が縦に裂けて、背中に猛烈な痛みが走ります。血管そのものは痛みを感じませんが、血管を包んでいる周囲の組織は痛みを感じます。血管が引き延ばされたり裂けると、血管の周囲の痛覚線維が激しい痛みを感じる。発症した人は『これまで経験したことのない痛み』と口を揃えます」(長尾医師)

 背中ではなく、胸に激痛を感じる病気の代表が心筋梗塞だ。3年前に心筋梗塞で夫を亡くした50代女性が語る。

「夕食を摂ってしばらくすると突然、夫が胸を押さえてうずくまりました。辛抱強いタイプの夫が苦悶の表情を浮かべ、手足をばたつかせて悶える姿が目に焼きついています。救急搬送されましたが、そのまま戻ってきませんでした」

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