ここ最近、「陰謀論」を信じる人が増えているという。芸能スキャンダルに関するものや、政治に関するもの、新型コロナウイルスに関するものなど、その種類は様々だが、陰謀論が広まる起爆剤となった存在のひとつが、アメリカのトランプ前大統領である。
トランプ氏は、今でも選挙結果は不正によるものと主張しており、共和党支持者の6割がそれを信じている。
中でも過激なのが、Qアノンと呼ばれる陰謀論者たちである。連邦政府の裏に民主党の政治家やハリウッドのセレブらエリートによる「ディープステート」という支配層があり、悪魔を崇拝して、子供の人身売買などに関与しているとして、それをいつかトランプ前大統領が軍を率いて打ち倒すと信じている集団である。1月に連邦議会に乱入して不法占拠したのも、Qアノンの信者たちが中心だった。
『白人ナショナリズム』などの著書があり、アメリカ社会を研究する慶応大学の渡辺靖教授が解説する。
「Qアノンのネットワークに連なる人はアメリカに数百万人単位でいると言われています。陰謀論は未知な現象が起きた時に広がりやすいので、アメリカではコロナと大統領選挙の不正疑惑が混ざり合い、広がっていきました。
背景には今のアメリカ政治やメディア、エスタブリッシュメントに対する不信感があると思います。自分たちは頑張って正直に生きているのに、報われないのはなぜかと思い、裏で何かが行なわれているに違いない、という感覚になっているのでしょう」
Qアノンはアメリカにとどまらず、コロナの感染拡大に不安を覚える世界中に広がりつつある。
Qアノンが拡散している陰謀論の一つが、「携帯通信の第5世代規格5Gが新型コロナウイルスを生み出した」という説。インドではつい最近までインド型変異株の感染拡大が続いていたが、「5G通信のテストで出した電磁波によって感染爆発が引き起こされた」というデマが広がり、インド政府の通信IT省が「5Gと新型コロナには何の関連もない」と緊急声明を出す事態となっている。そもそもインドでは、5Gのテストはまだ実施していないという。