誰もが憧れるものの、なかなか現実にならない“夢の馬券生活”。「JRA重賞年鑑」で毎年執筆し、競馬を題材とした作品も発表している作家・須藤靖貴氏がそんな馬券生活を夢見て、試行錯誤する。今回は、万馬券のために大活躍中のフランスからの騎手クリストフ・ルメールの弱点を探し試行錯誤した苦難の道についてお届けする。
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新馬戦の季節だ。JRA-VANのTARGETを使って2020年1月から2021年5月までのデータを取ったところ、「ルメールの新馬戦は割引?」なる仮説が浮かびあがった。
騎乗103回で1着24回、4着以下48回。勝率.233、単勝回収率は58円。しっかりと勝ち切ることも多いが、単勝回収率は芳しくない。このローリターンがルメール(がらみ馬券)の、泣きどころの一つなのだった。
新馬戦では、若駒の将来を勘案してムリをさせず、厳しいムチを控えるケースも。重賞などの追いっぷりと比べて「優しいルメール」と言われる。馬にとって騎手は自分を追い込む憎き鞍上。でもだからこそ不安でいっぱいのデビュー時には優しく。「競馬って、キツいなぁ」と怖がらせない、名手の気働きなのかもしれない。
ジェントル・スラップ(?)は奏功したのかどうか。勝てなかった79回、その馬の次走の首尾に注目した。
連続騎乗は35頭、うち6頭勝利。他の騎手への乗り替わりは34回で3勝。バトンを受けて勝ち切ったのはデムーロ、川田、吉田隼。ちなみに未走は10頭だった。
未勝利でルメールがさらに乗り続けた(面倒を見た?)馬はその後に6頭勝利。2回以上ルメールが跨ってから、他の騎手への乗り替わりでは7頭が勝っている。
データから見えてきたルメールの新馬戦がらみの外し方について。「勝てなかった馬が次走で乗り替わるときの勝率は.088。ほぼ消していい」。もっともこのときの鞍上はルメールではないのだが。
さて、「馬の将来を勘案」という点がほんとうなら、ルメールが最初に跨り、その後にGIを獲った馬は?
グランアレグリア、ラヴズオンリーユー、タワーオブロンドン、サトノダイヤモンド、キセキなどなど、2016年以降で11頭いる。うち9頭が新馬勝ち。2着だったのはアーモンドアイとディーマジェスティ。