列島各地で豪雨が続くなか、災害リスクと「盛り土」の関係に注目が集まっている。静岡県熱海市で起きた土砂災害では、人工造成地が崩れたことが被害を拡大させたと見て、県が調査を開始。だが、危ないのは山間部だけではない。災害リスクの高い造成地は都市部にも多数あることを、「地盤カルテ」が弾き出した。
国土交通省は2020年3月、全国に5万1306か所の大規模盛土造成地が確認されたことを公表した。
大規模盛土造成地には、3000平方メートル以上の面積の盛り土で谷や沢を埋め立てた「谷埋め型」と、傾斜面に沿って盛り土し、地山の勾配が20度以上かつ盛り土の高さが5m以上の「腹付け型」がある。
「熱海は谷埋め型でしたが、腹付け型だから安心というわけではなく、それぞれに土砂災害リスクはある。急傾斜地には見えない都心部にも土砂災害リスクの高い造成地は点在しています」
そう語るのは全国の住宅地盤の調査・解析を手掛ける「地盤ネット」取締役で一級建築士の伊東洋一氏だ。
全国各地の地盤の“診断結果”を知ることができるネット上のサービス「地盤カルテ」を提供している同社は、7月の豪雨被害を受けて、防災を目的として地盤・災害・不動産情報や安全性の高い物件情報が閲覧可能な有料オンラインサービスも限定無料開放している(7月31日まで)。
地盤カルテは、調べたい住所を入力すれば、その土地の【A】地盤改良比率(補強工事の度合い)、【B】浸水リスク、【C】地震による揺れやすさ、【D】土砂災害リスク、【E】液状化リスクの5指標を総合評価したスコアが算出される。
「独自データに加え、全国各自治体のハザードマップや国土地理院が作成したリスク区分などをもとに弾き出しているので、極めて信頼性が高いと自負しています」(同前)
『週刊ポスト』は地盤ネットの協力のもと、国交省が公開している大規模盛土造成地のなかで地盤カルテが土砂災害リスク3以上(1、3、5の3段階評価)を示した地点(東京・大阪の計27か所)を抽出し、別掲の地図に記した。