住民通報で発覚
防災システム研究所の山村武彦所長が語る。
「盛り土がすべて危険なわけではありません。熱海の土石流は静岡県副知事が言及したように『谷埋め型盛り土』が、届け出よりも実際には2倍近い量だったことも原因の一つとみられます。
日本は国土の7割が中山間地のため、斜面を開発したり、住宅を建てる必然性は高い。造成地は施工とメンテナンスが非常に重要なため、そのチェックは行政が担いますが、十分ではないことがある。対策が適切に行なわれなければ、熱海のような土砂災害につながるケースが起きてしまう」
山村氏によると、適切ではない盛り土が明らかになるきっかけは、異変を感じた住民からの通報であることが多いという。前出の伊東氏も警鐘を鳴らす。
「大規模造成工事の際は、都道府県知事が擁壁を含めて様々な条件を付けた上で許可しますが、時には行政も把握しきれない“穴”が地盤には潜んでいます。
“いままで大丈夫だったから”は通用しない。念のため地盤カルテで診断すると思わぬ数字が出たというケースはままある。危ない土地は法律で建築や居住が禁止されているはずだから、といった根拠のない安全神話は捨てましょう」
リスクはすぐそこにある。
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号