東京五輪での日本人選手の活躍が連日、報じられるなかで、全国各地では8月9日に開幕する夏の甲子園に向けた高校野球の地方大会が行なわれている。「スーパー中学生」と呼ばれ、高校進学前から注目を集めていた高知高校・森木大智の最後の夏となったが、またも強豪校の高い壁に阻まれる結果となった。高知大会決勝で高知高校との直接対決を制した明徳義塾は、いかにして森木を攻略したのか。そこに至るまでのドラマを紹介しよう。
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春のセンバツを制した東海大相模(神奈川)や強豪校の星稜(石川)が新型コロナのクラスター発生によって地方大会の道半ばで出場を辞退し、東北では宮城・仙台育英や福島・聖光学院、青森・八戸学院大光星など、甲子園の常連校が思わぬ伏兵に敗れた。さらには市立和歌山の小園健太、天理(奈良)の達孝太といった今秋のドラフト上位候補もまた聖地にたどり着けなかった。
無観客の東京五輪がメダルラッシュによって沸き立つその裏で、東京五輪の閉会式翌日に開会式を迎える夏の甲子園に向け、高校野球は大波乱の連続だ。
そして高知では、中学時代に軟式球で150キロを記録し、この世代で最も注目を集めた豪腕・森木大智を擁する高知高校が決勝で馬淵史郎監督率いる明徳義塾に3対5で敗れた。
世代ナンバーワン右腕と、高校野球の名伯楽の直接対決──果たしてこの結果は波瀾だったのか、それとも順当だったのだろうか。
試合の直後、春野球場を訪れていた観客の前で、馬淵監督はこう打ち明けた。
「1年前からこの決勝戦を想定して、『速球打ち』と『無駄な点をやらない』ということをテーマにやってきた。それは間違いではなかったと思います」
森木は3年前から、高知のスーパー中学生としてその存在が知られていた。馬淵監督は当時、今後3年間対戦することになるであろう森木のことを、強がるようにこう評していた。
「確かにええピッチャーよ。高知の宝やね。でも高校に入ってからののびしろで言ったら、うちの関戸(康介。その後、大阪桐蔭に進学)のほうが上かもしれん」