近年、急速に普及しているのが、患者の費用負担が少なくて済む「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」だ。だが、昨年から今年にかけてジェネリック医薬品をめぐる“スキャンダル”が相次いでいる。
富山市に本社があるジェネリック大手「日医工」では、出荷検査で不合格となった錠剤を取り換えて再試験したり、錠剤を砕いて再加工したりするなどの不正が明らかになった。少なくとも2011年からの10年間、工場長の指示で行なわれた「組織ぐるみ」の不正だったという。
2020年12月には、同じくジェネリックを手がける医薬品製造「小林化工」(福井県あわら市)で、同社の経口抗真菌剤(水虫薬)「イトラコナゾール錠」に、睡眠導入剤の成分が混入していた問題が発覚した。この薬を飲んだことによる意識消失や記憶喪失などの健康被害は100件以上報告され、なかには運転中に意識を失い、物損事故を起こしたケースもあったという。
昨年からの不正発覚は、現在も尾を引いている。日医工や小林化工が生産を一時停止したことなどでジェネリック医薬品の供給が滞り、一部が品薄状態で納品も滞り調剤業務に影響が出ているという。
ジェネリック医薬品の一時的な供給不足が調剤業務にまで影響するのは、それだけ使用割合が高いということだ。なぜ今、ジェネリックが多く使われているのか。薬剤師の深井良祐氏が解説する。
「新薬の開発には300億円以上のコストと9~17年の期間がかかるのに対し、ジェネリック薬は1億円程度、3~5年で開発できます。安価に作れるジェネリックの使用は患者の医療費負担を減らすだけでなく、国の医療費全体を減らすことができる。その削減効果は全国規模で考えると巨額なものになります」
政府は2013年、医療費削減のためにジェネリックの使用拡大に向けたロードマップを作成。2013年に46.9%だった使用割合は直近で78.3%(2020年9月速報値)に達した。市場規模では2019年に初めて1兆円を突破(前年比7.5%増)し、今後もさらに拡大すると見込まれている。
診察や処方薬の購入時、医師や薬剤師からジェネリックを希望するか尋ねられたり、勧められたりすることは多いが、これには“事情”がある。『医者はジェネリックを飲まない』(幻冬舎刊)の著書がある医師で作家の志賀貢氏が指摘する。
「後発医薬品使用体制加算制度により、病院や薬局はジェネリックを処方する割合が高いと診療・調剤報酬の保険点数(1点10円)が加算されます。例えば病院の外来診療では、1枚の処方箋につきジェネリックの割合が85%以上なら5点、75%以上は4点、70%以上は2点が加算される。処方箋1枚あたり50円以下の加算といえども、1日数千人の外来患者が来る都市部の大学病院などでは、大きな収益源になります。
薬局も同様で、現在は処方箋の受け付け1回につき、ジェネリックの調剤数量割合が85%以上で28点、80%以上で22点、75%以上で15点が加算されます。こうした加算がある一方で、ジェネリックの調剤比率が低い薬局に対しては調剤基本料の“減算規定”というペナルティが設けられている。アメとムチでジェネリックの普及を推進しようという国の意図があるのです」