医者は飲んでいない
ところがもう一方で、ジェネリックの使用に関してこんなデータがある。厚労省が2020年9月診療分の医療費をもとに公表した全国の健康保険組合のジェネリック使用率は平均で約8割だったが、同期間の都道府県医師国民健康保険組合(医師国保)のジェネリック使用率は約6割と、全体平均を大きく下回っている。
「医師国保は全国47都道府県にあり、開業医やその家族、医療機関で働く従業員が加入しています。都道府県医師国保のジェネリック使用率が全国平均より少ないことから、全国の医師らがジェネリックの使用に二の足を踏んでいる実情が窺えます」(前出・志賀氏)
医師らのジェネリック使用率が低調な背景には何があるのか。近畿大学薬学部元教授の松山賢治氏はこう指摘する。
「政府主導のジェネリック推進により需要が急拡大したことで新規参入が急増、競争が激化しました。ジェネリックの薬価も下げられ、メーカーは生き残りのためコストダウンや生産量の確保を優先し、品質確保に懸念が生じています。
コストダウンのため原薬の製造を中国やインド、韓国などに委託するメーカーも少なくありませんが、リスクもあります。2012年には韓国の原薬メーカーSSファーマがGMP(厚労省が定める医薬品の製造・品質管理基準)不適合となり、同社から原薬を調達していた国内13社が製造中止に追い込まれたことがありました」
利益追求やコスト削減の結果、品質や安全性が疎かになる懸念は、前述した日医工の不正問題を調査した外部有識者の報告書からも読み取れる。
〈遅くとも2009年頃の時点で、生産品目及び包装形態が多く試験数に対して人的・物的設備が不足していたことにより、必要な試験が全ては実施できない状態であった〉(TMI総合法律事務所が日医工に提出した「調査報告書」(概略版)より)
2018年7月には、中国メーカーの原薬に発がん性物質N-ニトロソジメチルアミンが混入していたことが発覚した。
「混入していたのは高血圧症治療薬の『バルサルタン錠AA』で、降圧剤として有名なディオバンのジェネリック薬です。販売元のあすか製薬は全ての該当製品を回収しました。トラブルが続くジェネリックに不信感を抱いている医師は少なくない」(前出・志賀氏)