平時でも苦労が多い自宅介護。コロナ禍での実情とは、いかなるものなのか。女性セブンの名物アラ還記者“オバ記者”こと野原広子さん“コロナ禍の自宅介護”の現実を明かす。
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いろいろな意味で今回の東京五輪は、生涯忘れられないものになったと思う。後々、ひとつの情景を何度も何度も思い浮かべることになると私は確信している。
それは、コロナ禍で感染者数が急増する中で、大会を開催する意味があったのかというもっともな議論ではなく、もっと個人的なことだ。
寝たきりで数日前まで意識がハッキリしなかった93才の母親が、座敷に設置したベッドから男子バレーボールの試合を見ていたのよ。
元気だった頃、ルールがわかるとは思えないながらもバレーボール好きで、「それっ、がんばれ! あ~あ~、ダメだな~。それっ!」と大声を出していたけれど、そのときと同じ目をして、テレビ画面を凝視していたの。
その姿に胸がいっぱいになった──と言いたいところだけど、実際は現実味がなくて、思わず、「母ちゃん、東京オリンピックだど。わがっか?」と声をかけたら、かすかにうなずいたんだわ。
このことは、私にとって日本がメダルをいくつ取ったかということよりずっと喜ばしいことで、テレビが母親を刺激してくれたことにひたすら感謝しちゃった。
その数日前に病院から退院していた母親と会うのは4か月ぶりのこと。入居していた施設や緊急搬送された病院がコロナ禍での面会を許さなかったからで、ひとり暮らしをしていた自宅で2か月前に倒れた母は「危篤」で入院していたの。