生活習慣病で複数の薬を飲んでいるという人も多い。さらに、歳を重ねると生活習慣病の薬だけでなく、加齢による代謝や臓器などの衰えを様々な薬で補うケースが増えてくる。代表的な例が、骨の強度が低下して脆くなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)だ。骨折を避けるため骨粗鬆症薬を服用する高齢者が多いが、米山医院院長の米山公啓医師はこう語る。
「骨粗鬆症薬のビスホスホネート系薬剤は、胃の不快感や便秘といった消化器症状の副作用が出る可能性があります。また稀にですが、顎の骨の組織や細胞が局所的に死滅し、骨が腐った状態になる顎骨壊死が生じることがある。骨粗鬆症薬は『お年寄りは骨が弱くなるから』と漫然と処方されることが多い」
国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎医師が懸念するのは、胃腸薬を飲んでいる人が骨粗鬆症薬を併用することだ。
一石医師が断薬指導した60代前半の女性は、長引く胃の不調を訴えて来院した。胃カメラで検査したら軽い胃炎が見つかり、胃酸分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬、胃腸の粘膜を保護する胃炎治療剤、胃腸の動きを活発にする胃腸機能改善薬を処方したが、症状は改善しなかった。
だがその後の問診で女性は「実は整形外科でもらった骨粗鬆症薬も飲んでいます」と告白した。
「本人は最初、胃には関係ないと思って申告しなかったそうです。骨粗鬆症薬は胃腸に影響して胃のむかつきを起こすことがあるので服用を控えてもらうと、1週間で胃の不調が治って普通に食事ができるようになりました。そこで3種の胃腸薬もすべて処方を中断しましたが、胃腸には全く影響がありませんでした。結果的に骨粗鬆症薬の副作用が胃の不調をもたらしていたものと考えられます」(一石医師)
頻尿の薬は「喉が渇く」
高齢者にとって一日に何度もトイレに行きたくなる頻尿も悩みの種だ。飯田橋中村クリニック院長の中村剛医師が語る。
「頻尿を改善する過活動膀胱薬のうち、ムスカリン受容体拮抗薬は、口腔乾燥や便秘、排尿症状の悪化などの副作用がある。尿を出しにくくする一方で唾液が出にくくなり、口の中が乾いて水分を摂りたくなる。薬を飲むことで頻尿を招くケースもある」