がんが見つかった時、患者がまず直面するのは「どの治療を選択するか」という問題だ。がんの「3大治療」といえば「手術(外科治療)」「放射線治療」「化学療法(抗がん剤)」が知られているが、なかでも第一選択肢として医師から提案されることが多いのは「手術」である。
しかし、ひと口にがんと言っても部位やステージによって、治療法ごとの予後は大きく変わる。国立がんセンター中央病院薬物療法部医員を務めたことのある医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が言う。
「がん治療は『手術が可能なら全て手術』という考え方がかつては一般的でしたが、今はそうではない。がんの部位や患者さんそれぞれの状況によって選択は変わります。とにかく何でも手術、というのは間違いと言えます」
医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。
「海外ではがん治療で『いきなり手術』はご法度と考えられています。米国がん合同委員会はがんのタイプやステージに合わせた術前の補助化学療法や放射線治療を検討するよう勧めています。抗がん剤や放射線により手術の効果を高め、生存率を上げられる可能性があるからです」
最初にどの治療を選ぶべきか――。その選択の際に助けとなるのが、「5年生存率」のデータだ。がんと診断された患者が5年後に生存している割合を示すもので、治療成果の目安となる。本誌は詳細な「5年生存率」の最新データを、全国がんセンター協議会(全がん協。全国32のがん専門病院からなる研究グループ)の約24万症例の集計結果から抽出した。これを精査すると、「切ってもいいがん」「切ってはいけないがん」が見えてくる。
永久に「人工肛門」
別掲の表は、全がん協の生存率共同調査の結果から、患者の年代別に「がんの部位」「ステージ(1~4)」ごとの5年生存率をまとめたものだ。
表中では、患者が「初回治療(診断後、当初に計画された治療)に何を選択したか」を4つに分類し生存率を集計している。