認知症になると、自分がどこにいるのかわからなくなることもある。時間と場所がわからなくなるのは脳のGPS機能の低下が原因。これにはいったいどう対処すべきなのか?
自分の今いる時間、場所がいつ、どこなのかわからなくなるのが「時間と場所の見当識障害」である。私たちの脳にはスマートフォンのGPS機能のように日時や現在地を認識する機能が備わっている。しかし、認知症になるとその機能が低下してしまい、今が「いつ」で、ここが「どこ」なのかわからなくなるのだ。理学療法士の川畑智氏はこう話す。
「その原因の多くは自分を実年齢より若いと思い込んでしまい、昔の世界に戻ってしまうことが考えられます。男性の場合、働き盛りだった30~40代に戻るケースが多いようですが、これは認知症の不安を解消したいために、元気で充実していた古き良き時代に戻ろうとするからではないだろうかと考えられています」(川畑氏)
健康な人でも旅先などで目覚めたとき、一瞬どこにいるのか、わからなくなることがある。あの不安な状態が続いているのだと想像することで、時間と場所の「見当識障害」が生じている認知症の人に対して、思いやりの心を持って、接することができるだろう。
まず、その不安を取り除き、安心できるように笑顔で声をかけて落ち着かせ、本人の状態をよく見極めて話を聞くことから始めよう。このとき、同じ目線の高さで話すことも忘れずに。話を聞けば、本人が今いつの時代のどこにいるのか想像できるだろう。
「そうじゃない」と頭から否定せずに、寄り添うことが大切だ。認知症の人が見ている世界と、ケアをする人の世界のギャップを少なくするように接していくには、思いやりのある心と、豊かな想像力が必要なのである。