今年の新人王が12月15日のNPBアワードで発表される。今シーズンはセ・リーグが熾烈な争いとなっている。1998年に、14勝をあげた川上憲伸(中日)、9勝18セーブの小林幹英(広島)、打率.300本塁打19本の高橋由伸(巨人)、打率.327の坪井智哉(阪神)が争った時以来の大混戦ではないだろうか。ただ、過去の名選手のルーキーイヤーを振り返ると、今年の猛者たちを凌ぐ者もいる──。
まず、今年のセ・リーグ新人王候補を見ていくと、DeNAの牧秀悟(23)は新人では初のサイクルヒットを記録(8月25日)。終盤には4番に定着した。球団の新人最多安打を更新したうえに、二塁打を35本放って新人最多二塁打記録を塗り替えている。本塁打22本、打点71、打率は.314でリーグ3位。新人での3割20本をクリアしたのは清原和博以来だった。
阪神の佐藤輝明(22)はシーズン序盤にホームランを量産し、球団新人記録を52年ぶりに更新。後半に苦しんだものの、新人の中では最多の24本塁打を放っている。佐藤とチームメイトの中野拓夢(25)は木浪聖也からショートのレギュラーを奪い、30盗塁で盗塁王を獲得している。
投手も豊作だった。広島の栗林良吏(25)は開幕から抑えとして53試合に登板し、新人最多記録タイの37セーブをマーク。開幕から22試合連続無失点で新人の開幕連続無失点記録を更新している。防御率0.86でセーブ機会での失敗はなく、マツダスタジアムでは防御率0.00だった。東京五輪でも守護神を任され、日本の金メダル獲得に貢献している。
阪神の伊藤将司(25)もローテーションの一角として23試合に登板。ドラフト制度後の球団新人左腕では、江夏豊(12勝)以来、54年ぶりとなる10勝(7敗)をマークし、防御率2.44だった。10月には月間MVPに選ばれ、新人左腕としては球団史上初の快挙を成し遂げた。スポーツ紙デスクが語る。
「新人王の資格がある2年目の奥川恭伸(20)も飛躍の年となった。昨年は1試合(2イニング)しか登板していなかったが、今季は後半になって頭角を現わした。8月以降に5勝を挙げ、18試合で9勝4敗、防御率3.26の成績を残した。リーグ優勝に貢献し、日本シリーズ第1戦ではオリックスのエース・山本由伸と投げ合い、7回1失点の好投を見せたことも記憶に新しい」
新人王は全国の新聞、通信、放送の各社で5年以上プロ野球を担当した記者の投票によって決まるが、誰が獲得してもおかしくない成績を残しており、大激戦となっている。
「ただ、歴代の打者のなかに、今年の新人王候補の成績をすべて集約したような、飛び抜けて優れた結果を残した選手がいる。1958年に新人王を満票で獲得したミスター(長嶋茂雄)です」