そう語るのは、ベテランスポーツジャーナリストだ。長嶋の1年目は打率.305(セ・リーグ2位)、本塁打29本(同1位)、打点92(同1位)、二塁打34本(同1位)、盗塁37(2位)、153安打(1位)という数字だった。本塁打は豊田泰光の持っていた新人本塁打記録(27本)を更新。牧、佐藤、中野の成績をすべて集約した、あるいはそれ以上とも言える数字を残しているのだ。
「打率こそ田宮謙次郎(.320)に大差をつけられての2位だが、本塁打、打点の二冠に輝いたうえでの新人王だった。しかも、打球がスタンドインしながら一塁ベースを踏まなかったことで本塁打が取り消されており(9月19日、広島戦)、ベースを踏んでいたら新人で3割、30本、30盗塁のトリプルスリーを達成するところだった。プロデビューとなった開幕戦で後の400勝投手で国鉄の大エース・金田正一から4打席4三振を喫したエピソードが有名だが、1年目から『4番・サード』の仕事を任された実力は、やはり球史に残るものだ」(前出・ベテランスポーツジャーナリスト)
ミスタープロ野球は、記憶だけでなく、記録にも残る選手だった。