今年4月から中学校で全面実施となっている新学習指導要領の英語では、これまでの授業で疎かにされがちだった「話すこと(スピーキング)」が重視されることになっている。それを受けて東京都は全国に先駆けて、現在の中学2年生が受験することになる2023年度の都立高校入試から、都独自に実施する「東京都中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)」(以下、スピーキングテスト)の結果を採点に組み入れることにしている。
その本格実施を前に、今年9月末から10月にかけて都内の公立中学校の3年生、約8万人を対象にプレテストが行われた。本番のスピーキングテストは、入試日の前年11月末頃に外部の会場を使って一斉に行われる予定になっている。その波紋が広がっている。
スピーキングテストは、都教育委員会(都教委)と協定を締結した業者(現在はベネッセコーポレーションで5年ごとに見直す予定)が都教委の監修の下に作成した問題によって行われ、試験の実施も事業者が請け負う。使用されるイヤーマフ、イヤホン、そしてタブレット端末も事業者が用意した専用のものが使われ、採点も事業者によって行われる。この事業にかかる費用は、今年度だけでも約4億円だという。
「新学習指導要領になって授業ではスピーキングにも力を入れており、それをきちんと評価しようというのが目的です。さらには、その結果を授業での指導にも活かして欲しいと考えています」と、東京都教育庁の指導部では説明する。
ただ、「まだ授業でのスピーキング指導も十分でないのに、入試結果に影響するスピーキングテストが急に始まるというので、学校現場は戸惑っています」(都内公立中学校教員)という反応があるのも事実である。
スピーキングテストは「20点満点」で内申点に加算
入試に影響するとなれば、学習塾としても黙っていられない。ある大手学習塾で英語を担当する講師は次のように語る。
「今後どう対応していくか、いま検討しているところです。しかし学校でもスピーキングに熱心だという話はあまり聞かないし、まだ生徒や保護者のニーズも高まっているとは感じていません。入試での配点も大きくないし、スピーキングテスト対策ではなく、入試科目や内申点の対策に力をいれたほうが効率的だという見方もあります」