都立高校入試は、入試当日の学力検査の得点が700点満点、調査書(内申)点が300点満点の合計1000点満点で評価されてきた。ここに新たにスピーキングテストの結果が加えられることになるのだが、その配点は20点である。スピーキングテストの結果は学校に伝えられ、得点は内申点に加算される。つまり、内申点が320点満点となるのだ。
その20点のための新たな対策に力を割くよりも、従来の入試対策で学力検査や内申の点数を上積みする努力をしたほうがいいと考えるのも無理はない。
一方で、「スピーキングテストは学校の授業を変える絶好の機会になります」と話す都内公立中学校で英語を教えるベテラン教員もいる。その教員が続ける。
「学習指導要領は変わっても、従来の英文和訳・和文英訳といった授業から抜けられない教員も少なからずいます。英語でのコミュニケーション能力が不可欠な時代になっていくなかで、生徒の将来を考えれば、授業でスピーキングにも力をいれていくべきです。それには教員の意識を変えることが先決で、スピーキングテストはそのためのショック療法になるかもしれません」
テストで意識を変えるのか、意識が変わってからテストを導入するのか、それも難しい選択ではある。とはいえ、その教員も「業者の行う採点で公平性が担保できるのかどうか不安はあります」という。多くの学校関係者から聞こえてくる不安でもある。都教育庁指導部は「ちゃんとした専門家を集めているので心配ありません」というが、本格的に始まってから成果と同時に問題もはっきりしてくるのかもしれない。
取材・文/前屋毅(ジャーナリスト)