厚労省の「地域保健・健康増進事業報告」(2016年度)によると、1年間で約13万人発生する新規の胃がん患者のうち、自治体が行なっているバリウム検査でがんが見つかったのは、たったの4500人だった。
こちらも肺がんと同様に、より高い精度で調べることができる検査が存在する。それが胃内視鏡検査(胃カメラ)だ。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師が語る。
「胃内視鏡検査は、先端にライトとカメラ(電子スコープ)のついた管を口や鼻から挿入し、内側から消化管を直接観察します。胃だけでなく、途中にある咽喉、食道など胃以外の病変を確認できるメリットもある。
挿入時に痛みや吐き気を伴いますが、昔よりは楽になり、鎮静をかける方法や鼻から内視鏡を入れる方法もあります。画像技術の進歩で大量の画像や動画を保存でき、見落としを減らすためのダブルチェックや人工知能での評価なども一部では始まっています」
以前、『週刊ポスト』が特集した『現役医師20人に聞きました この検査を受けますか?受けませんか?』(2020年3月27日号)でも、胃がん検査において胃内視鏡検査は現役医師の60%が「受ける」と回答したが、バリウム検査を受けるとした医師はわずか5%だった。
小腸に近いがんは見つからない
人間ドックのオプションとして多い腫瘍マーカー検査。がん細胞から分泌される微量なたんぱく質を検知し、画像診断と組み合わせることで肺や大腸、膵臓、胃、肝臓などにできたがんを調べる検査だが、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏は、「検診として受けてもほとんど意味がない」と指摘する。
「腫瘍マーカー検査は、基本的にがんの治療効果や再発の有無を調べるためのものです。初期の小さながんを見つけることは難しいうえ、逆にがんがないのに『陽性』と出てしまう場合も多いので、検診としてはあまり有効ではありません。
仮に陽性となった場合、どの部分ががん化しているかを特定するために、見つかるまで何度も精密検査を受けることになります」(室井氏)