ライフ

縞模様を見ることで視力改善? 「ガボールパッチ」の効果とメカニズム

写真の中からガボールパッチ(ぼやけた縞模様)を1つ選び、それと同じものを探す(縞の向きは問わない)。すべて見つけたら別のガボールパッチで同様に繰り返す

写真の中からガボールパッチ(ぼやけた縞模様)を1つ選び、それと同じものを探す(縞の向きは問わない)。すべて見つけたら別のガボールパッチで同様に繰り返す

 視力アップトレーニングの効果が注目を集めている「ガボールパッチ」。眼科専門医の林田康隆先生にその効果とメカニズムを訊いた。

 * * *
 ガボールパッチとは、ノーベル物理学賞を受賞した英国の物理学者、デニス・ガボール博士が考案したぼやけた縞模様のことです。元々は視力回復目的のために考案されたものではありませんが、この縞模様をしっかり見ることにより、軽度の近視や老眼の改善に効果があるとの論文が複数発表されています。視覚を刺激する効果が高いとして、2017年には米紙「ニューヨークタイムズ」の記事で紹介され、世界的に知られるようになりました。

 では、なぜガボールパッチを見ることによって視力の改善が期待できるのでしょうか。実際のメカニズムは解明されていませんが、実は、ぼやけた縞模様を見るとき、目だけでは判別できないため、脳が情報を補いながら見ようとします。この脳の補完力をわかりやすく説明するために、「脳内視力」と呼びます。

 ぼやけた縞模様を見た際に、目でとらえた情報を脳で映像化して認識する「視覚野」が刺激され、脳の画像処理能力を高める、つまりは“脳内視力を高める”ことにつながると言われています。

 そもそもこのガボールの縞模様は自然界に溢れ返っています。それは光の干渉波と言われるものです。これは私の持論ですが、人間は大自然の中で生き残るために必死で種を保存してきました。

 視覚の発達した人類には如何に外界の情報を正確に見極めるかということがとても大切でした。太陽からの光が降り注いでいるこの地球上の環境下において、光が織りなす色や物の見え方の変化は多彩なものです。その中で今日を生き抜くために視覚を駆使してきた人類にとっては、外界の対象物をどの明るさの環境でも正確に見抜く力が必要であったはずです。

 米国・カンザス大学が近視の患者と初期の老眼の患者の計38人を対象に行なった研究によると、ガボールパッチのトレーニングを1回30分、週に2~3回を3か月間実施したグループは全員の視力がアップし、老眼の患者が近くを見る視力は平均0.3上がるという結果が出ています。

 人類の長い進化の過程で、現代人の視覚の使い方は一瞬とも言える短期間で大きく変化をしています。生きるために使っていた視覚は、歩きスマホでも分かるように、その使い方が大きく変化を遂げています。脳の視覚野の機能が低下すると、認知機能も低下しますので、ぼやけた縞模様を見て日常的に脳を刺激することは、超高齢化社会の中で、認知症予防にも寄与すると考えられます。

関連記事

トピックス

10月17日、東京・世田谷区の自宅で亡くなった西田敏行さん(時事通信フォト)
《俳優・西田敏行さん逝去》訃報を受けて一番に供花を届けた「共演女優」 近隣住民が見ていた生前の様子
NEWSポストセブン
ワールドシリーズMVPも視野に
《世界一に突き進む大谷翔平》ワールドシリーズMVPに向けて揃う好条件「対戦相手に天敵タイプの投手がいない」、最大のライバルは“ドジャースの選手”か
週刊ポスト
コンビ名はどうするのか(時事通信フォト)
「変えなくていいのか?」ジャングルポケット・斉藤慎二 残された2人を悩ます「コンビ名問題」
週刊ポスト
「応援していただいている方が増えていることは感じています」
【支持者が拡大中!?】斎藤元彦・前兵庫県知事インタビュー「街頭で、若者からの支持を実感しています」
NEWSポストセブン
芸歴66年を迎えた石坂浩二
【石坂浩二ロングインタビュー】27才での大河ドラマ主演を振り返る「特別な苦労は感じなかった。楽しい思い出ばかりでした」
女性セブン
合法的な“落選運動”のやり方(イメージ。時事通信フォト)
【“裏金議員”の落とし方】公選法の対象外となる合法的な“落選運動”の注意点 「組織でやるのはNG」「根拠となる事実を提示」
週刊ポスト
10月17日、東京・世田谷区の自宅で亡くなった西田敏行さん
《逝去》西田敏行さん、杖と車椅子なしでは外出できなかった晩年 劇場版『ドクターX』現場が見せていた“最大限の配慮”
NEWSポストセブン
グラビアアイドルとしてデビューした瀬戸環奈さん(撮影/カノウリョウマ)
【SNSで話題の爆美女】1000年に一人の逸材・瀬戸環奈が明かす「グラビア挑戦を後押しした“友人の言葉”」
NEWSポストセブン
パリ五輪柔道女子金メダリストの角田夏実選手(時事通信フォト)
《ジャージめくって見せたバキバキ生腹筋》パリ五輪で柔道金・角田夏実、今後の去就「タレント活動の行方」「結婚願望」「3つの理想タイプ」
NEWSポストセブン
韓国・台湾メディアが批判的に報じ大炎上している
《韓国人女性の性的画像投稿疑惑で大炎上》ナンパ師グループが“非モテ男性”を狙って展開した「情報商材ビジネス」の全貌
NEWSポストセブン
バレーボール女子日本代表監督の眞鍋政義氏が“火の鳥不倫”か(時事通信)
元女子バレー代表監督・眞鍋政義氏が騒動で初コメント「軽率な行動でご迷惑を…」 近く発表の新監督人事は
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「石破茂は保守かエセか」大論争ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破茂は保守かエセか」大論争ほか
NEWSポストセブン