2020年5月に高田川部屋の三段目力士、勝武士(享年28)が新型コロナウイルスに感染して亡くなった。20代の力士が命を落としたことは世間に衝撃を与えたが、糖尿病の持病が死亡リスクを高めたと考えられている。横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長で糖尿病専門医の市原由美江さんはいう。
「糖尿病は腎不全や神経障害、動脈硬化などさまざまな合併症を引き起こし、感染症のリスクも高めます。血液検査には、赤血球についたブドウ糖の割合を見る『HbA1c』(ヘモグロビンエーワンシー)の数値がありますが、新型コロナに関して言えば、HbA1cが7.3%以下なら問題はない。ですが、8.1%以上になると重症化するリスクが約10倍上がると指摘されています」(市原さん)
HbA1cの数値は過去2週間の血糖値の平均を示しており、糖尿病の診断で重要視される。日本人間ドック学会の基準では、5.5%以下が異常なしとされているが、市原さんは「この基準は少し厳しい」と続ける。
「理想は5.5%以下ですが、日本糖尿病学会では6%以下が目標値とされています。病院では基本的に、6%を超えたら糖尿病の検査をします。5.5〜5.9%の人は経過を見守りながら、食生活の見直しや有酸素運動を日常に取り入れるといった生活改善を行ってもらいます」
コロナ禍により、自宅で飲酒する人が増え、アルコール依存症と診断される患者が増加していることも新たな問題となっている。東海大学名誉教授で健康診断の数値に詳しい大櫛陽一さんは、肝機能の指標である「γ-GTP」の基準値に疑問を投げかける。