春夏通算7度の甲子園制覇を誇るPL学園高校野球部の廃部問題を取材するようになった2014年以来、私は新年早々に開催されるOB会総会の取材を「仕事始め」としてきた。プロ野球の2022年シーズンに向けて桑田真澄OB会長が巨人軍の1軍投手チーフコーチに昇格し、1987年に春夏連覇した時の主将である立浪和義が中日ドラゴンズの監督に就任するなど、今年の総会にも大きな注目が集まっていた。だが、昨年に引き続き新型コロナの感染拡大によって中止となってしまった。
本来なら総会が予定されていた1月8日、私はPL学園の母体であるパーフェクトリバティー教団(以下、PL教団)の聖地に向かった。大阪府は近鉄喜志駅と富田林駅にまたがる広大な敷地内には老朽化した建物が建ち並び、新年が明けたタイミングでも人気はなかった。
御木徳一(みき・とくはる)が起こしたひとのみち教団を引き継ぎ、2代教祖・御木徳近(みき・とくちか)が事実上の初代としてPL教団を立教したのは1946年だ。学園野球部の甲子園での活躍などによって知名度が高まり、教団は公称265万人にまで拡大した。しかし、3代教祖である御木貴日止(みき・たかひと)が1983年に教祖となって以降は、次第に教勢を失っていき、3代が2020年12月5日に63歳で亡くなってから聖地は時間が止まったかのように静まりかえっている。その理由は、4代教祖のなり手がおらず、教団トップの不在が続いていることに尽きる。教団の布教活動に長年携わってきた元・教団教師が話す。
「PL病院の理事長秘書をしている3代様のご長男や、長く教団の発展に貢献してきた幹部が教祖就任を打診されたようですが、いずれも就任には至っていない。3代様が帰幽(死去)されてもう1年以上が経過しますが、一般の会員(信者)が参加するような大きな祭典が実施されず、教祖の大切な仕事でもある信者子息への命名や、亡くなった方への諡(おくりな=仏教で言う戒名)も行われていない。もはやPLは宗教団体としての形を成していないように見えます」
神道系の新宗教であるPL教団の信者が信仰する対象は、大元霊(みおやおおかみ)であり、教祖は現人神のような存在ではない。だが、信者の高齢化が進む中で、いつしか教祖その人を崇める風潮が生まれた。その教祖が不在という状態は、信者にとって信仰の対象を失ったようなものではないだろうか。