北京の外では徹底的に封じ込め(隣の天津。写真/EPA=時事)
コロナは「人民戦争」
行動制限の可能性は、日常のなかに潜んでいる。
「いつどこで突然閉じ込められるか分からないので、スマホ用のモバイルバッテリーを常に持ち歩いています。シェアバッテリーは取り合いになるのが目に見えていますから」(前述の駐在員)
上海の繁華街・南京西路にあるユニクロ旗艦店で1月13日、陽性反応の疑いのある人物が発見されたため店舗が即座に封鎖され、店内にいた来客とスタッフ約70人が48時間にわたって閉じ込められた。飲み水やパン、寝袋などが支給されたが、同様の事態は各地で発生している。
「1月末から春節の大型連休が始まりますが、帰省する人は少ないです。帰省中にロックダウンが起きると、北京に戻れず職場に復帰できなくなるので」(同前)
周知期間や準備期間もなく、一気呵成に人々の動きを封じてしまう。
欧米や日本をはじめ、各国がコロナとの共存を目指すなか、なぜ中国はゼロコロナにこだわるのか。ジャーナリストで拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が解説する。
「中国の医療体制は西側諸国に比べると脆弱なため、ウィズコロナに耐えられるほどのキャパシティーがないのです。人口の規模や密度から考えて、感染爆発が起きれば、たちまち医療崩壊を起こしてしまう。初期段階で芽を摘むゼロコロナのほかに、解決策がないのです」
湖北省武漢市では2か月半にわたってロックダウンを行なったが、日本のようにダラダラと長期間制限するより、「短期集中型」で行動制限を行なうほうが、経済へのダメージが少ないと中国は考えているようだ。