ドキュメンタリー映画『東洋の魔女』では、人気アニメ『アタックNo.1』の原点を東洋の魔女と捉え、作品内でコラボさせ話題に。(C)浦野千賀子・TMS

ドキュメンタリー映画『東洋の魔女』では、人気アニメ『アタックNo.1』の原点を東洋の魔女と捉え、作品内でコラボさせ話題に。(C)浦野千賀子・TMS

 回転レシーブの名手だった松村好子は、ゴルフ用品店に転職している。

「大松先生の紹介でした。その後、結婚して3人の子どもを育てた後、ご縁でいい仕事に巡り会い、数年前まで充実した毎日を送っていました」(松村好子)

「東洋の魔女」6人の中で最年少の磯辺サタも五輪の翌年に結婚。長男で競泳選手の繁守氏は1988年のソウル五輪に参加し、親子2代で五輪出場を果たしている。

 映画『東洋の魔女』(2021年公開)に出演している松村勝美は控え選手だったが、河西から背番号を受け継ぎ現役を続けた。「表彰式での感動が胸に焼き付いて、私もメダルを!との思いでした」と語るように、8年後のミュンヘン五輪では主将として日本代表を銀メダルに導いた。

 魔女たちのその後に最も腐心したのが、監督の大松だった。五輪翌年にニチボー貝塚を退社。その後は選手たちの結婚相手探しに奔走するなど、教え子たちとの交流が続いた。1968年には参議院選挙に立候補し、魔女たちも応援に駆けつけ、当選を果たしている。

 1974年の落選後は、再びバレー界に戻り、ママさんバレーの指導で全国を行脚。イトーヨーカドーのバレーボール部の顧問にも就任したが、1978年に急逝。神奈川県鎌倉市に建つ大松の墓石には、バレーボール型の石碑に「根性」の文字が刻まれている。

(了。前編から読む

『東洋の魔女』
(監督・脚本:ジュリアン・ファロ、配給:太秦)戦争の影を引きずる日本社会に自信と誇りをもたらした東京五輪(1964年)の東洋の魔女の活躍。魔女たちが語る当時の思い出話から、新たな「東洋の魔女」像が浮き彫りになっていく。全国の劇場で公開中。

取材・文/小野雅彦

※週刊ポスト2022年2月4日号

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