2月1日にキャンプインしたプロ野球。春季キャンプは新戦力の台頭や主力選手たちの充実した調整ぶりがメディアで報じられて、各チームのファンが最も希望を抱く時期かもしれない。だが、この球団は少し事情が異なるようだ。中日ファンからは「優勝する気があるのか?」といった厳しい声も上がっているのだという。いったいどういうことなのか、中日の戦力事情を探った。
昨季はリーグワーストの405得点と貧打に苦しんだ中日。日本一に輝いたヤクルトはリーグトップの625得点で、5位の阪神も541得点で中日より140点以上多い。広いナゴヤドームを本拠地にしているとはいえ、この数字は“強竜”とはほど遠い現実を示している。
スポーツ紙記者が中日の苦しいチーム事情を説明する。
「昨オフの助っ人野手は年俸5000万円の格安で補強したガーバーのみ。左の大砲として期待されましたが、直球に差し込まれて変化球にも対応できない。打率.156、0本塁打、1打点と戦力にならず1年限りで退団しました。
いまの主力選手のうち打席で期待を抱かせるのはビシエドと大島洋平ぐらい。ミート重視の打法で2020年に打率3割をマークした高橋周平も昨年は打率.259とふるわなかった。石川昂弥、根尾昂ら若手に期待がかかりますが、彼らはまだ主力選手のレベルではない。ビシエドと共にクリーンアップを固める新外国人は巻き返しに向けて不可欠な補強ポイントなのに、獲得の情報が聞こえてこない。これでは本気で勝ちたいのか疑われても仕方がありません」
ヤクルトのサンタナ、オスナが昨季の日本一に大きく貢献したように、助っ人外国人の活躍はチームの命運を大きく左右する。巨人は昨季獲得したスモーク、テームズ、ハイネマンが全員機能しなかったが、今季もメジャー通算96本塁打の実績を誇るグレゴリー・ポランコ、米国・独立リーグで2年連続MVPに輝いた長距離砲のアダム・ウォーカーを獲得した。
しかし、中日は現時点で12球団唯一支配下枠の新外国人の獲得発表がない。共にキューバ出身で右腕のフランク・アルバレス、外野手のギジェルモ・ガルシアを育成枠で獲得したがファームでじっくり育てる方針で、即戦力ではない。オフに支配下枠でドラフトを除く新入団選手を見ると、FA移籍した又吉克樹の人的補償でソフトバンクから獲得した岩崎翔のみで、野手は1人もいない。
2003年オフに中日の新監督に就任した落合博満氏が「現有戦力を10%底上げすれば十分優勝出来る」とFAやトレードでの戦力補強を敢行しないことを宣言し、翌年に見事にリーグ優勝を飾ったが、テレビ局のスポーツ担当者は「当時と今では戦力が全く違う」と強調する。
「落合元監督の手腕は評価されるべきですが、あの時は立浪和義、福留孝介、アレックス、谷繁元信、荒木雅博、井端弘和とチームの核になる選手たちがいました。大野雄大、柳裕也のダブルエースを軸に投手力で戦うにしても、打線があまりに弱すぎます」