新型コロナウイルスの感染防止や重症化予防の切り札とされるワクチン。これまでの日本人の接種率の高さは世界有数で、総人口の8割が2回目の接種を終えている。
ただ、3回目はこれまでと打って変わって進んでいない。1月末時点の3回目接種率はたったの3.2%にとどまる。
その原因は当初、「2回目接種から8か月以上の間隔をあける」とした政府方針にあると、指摘されてきた。感染力の強いオミクロンが出現したのにその期間を短縮する決断が遅かったというのだ。本当にそうだろうか。
「3回目の接種を躊躇する人のなかには、“2回目のようなきつい副反応はもうイヤだ”“重症化しにくいオミクロンのために、副反応の心配がある接種をする必要があるのか”と疑問を持つ人も多いとみられます」(医療経済ジャーナリストの室井一辰さん)
実際、1、2回目接種でファイザー製に比べて強い副反応が出たモデルナ製は、3回目では接種を避けられている。
3回目は2回目までと違うメーカーのワクチンを打つ「交差接種」が認められた。しかし、例えば千葉県富里市はファイザーの3回目予約は9割だが、モデルナは1割だったという“人気”のなさ。岸田首相が「これまで2回はファイザー社だったが、3回目はモデルナ社を打ちたい」と接種率向上をアピールしているほどである。
その3回目接種の副反応への心配は、現実に最悪の事態を引き起こした可能性がある。接種直後に亡くなった医療従事者が出たのだ。
その事実が明らかになったのは、1月21日の厚生労働省の専門家部会だった。ワクチン接種と副反応との関連性を議論する部会で、ワクチン接種後の死亡者の最新事例が報告されたのだ。
そのうち、3回目の接種後に亡くなったのは2例だった。
1人目は、昨年12月16日にファイザー製を接種して3日後に亡くなった57才の女性だ。予診票での留意点はなかった。
「警察案件なので、医療機関が家族から詳細を聞くのは難しかった」
その事例を説明する際、厚労省の担当者はそう説明した。つまり、突然死により事件性などが疑われて警察が関与する案件となり、遺族に詳しい話が聞けず、死亡時の詳細が不明との見解だ。
「亡くなられたのは、東京・日野市の市立病院に勤めていた看護師のAさんです」と語るのは、日野市市議の池田としえさんだ。
「もともと12月17日から、市民の陳情により、ワクチン接種後の健康状態の調査を行っていました。そのなかで昨年末、Aさんが亡くなられたことが判明しました。偶然ですが、Aさんは私の家族が入院した際にお世話になった看護師さんでした。とても明るくて責任感が強く、優しいかただったことを覚えていました。
ご主人によると、ご自宅で亡くなられたそうです。ご主人が仕事から帰ってきたときに倒れていたそうです。既往歴はなく、それまでとても元気だったそうです。ご主人も信じられないご様子で、沈痛な面持ちでした。
市民の不安を少しでも解消するために、ワクチン接種後に亡くなった事例について、行政はできる限りの情報公開をすべきです」
Aさんの夫にも話を聞いた。