田原総一朗氏が藤井聡・京都大学大学院教授と緊急会談

田原総一朗氏が藤井聡・京都大学大学院教授と緊急会談

自主独立のチャンス

田原:交渉がうまくいけば、ですね。北京五輪に、日本は選手を派遣するが、重要閣僚は訪中しないと決め、それを中国は認めました。だから、これはマイナスには働かなくて、基本的にはスムーズに進んでいる。習近平は日本が何を考えてるかがわかっていると思いますよ。

藤井:日本はことを荒立てないように振る舞っているだけに見えますけどね。五輪ボイコットや非難決議は、中国の仕返しが怖くてできないから、中途半端な対応に終わっているようにしか見えません。

田原:いや、バイデンも日本の方針を認めています。

藤井:仮に尖閣有事が起きた際に、日本だけで中国と対峙するのは極めて困難ですから、今、日米間でもっとも重要な問題は、アメリカが米軍を出動させるかどうかです。それは日本が“腹をくくるかどうか〟という問題で”米軍が出動しようがしまいが、自らの領土を守るために徹底的に戦う姿勢を見せる必要がある。中国軍が尖閣に上陸しているのに、日本は当事者として何もしなければ、アメリカも米軍を派遣しないでしょう。安保条約にも、自動的に参戦するとは書かれていません。

田原:それはそうでしょうね。

藤井:だから、日本は自らの領土を絶対に守ると腹をくくり、その意志を世界に向けて公表することが大事です。

田原:そういう意見があるのは当然です。でも、岸田さんにはその腹がありますよ。見ようとしないから見えないだけで。今のマスコミには、総理大臣にまともに取材できる人間が、残念ながらほとんどない。これが日本のメディアだと思うと情けない。

 バイデンにしても、あまり詳しくは言えないけど、日本がいつまでもアメリカの子分でいることは良くないと思っている。

藤井:バイデンがどう考えているかはわかりませんが、かつての“ジャパンハンドラー”たちが暗躍した時代に比べると、日本の独立を求める声が格段に大きくなっているというのは、ワシントンの常識です。

 そうはいっても、日本からはまだまだ美味しい汁が吸えると思っている側面もあるので楽観はできませんが、昔よりはマシになっている。この流れをさらに拡大して日本の真の独立に繋げていくのが日本の最重要課題のひとつだと思います。

田原:日本にとっては大きなチャンスですよ。

(了。第1回から読む

【プロフィール】
田原総一朗(たはら・そういちろう)/ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、テレビ東京を経て1977年フリーに。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。近著に『自民党政権はいつまで続くのか』など。

藤井聡(ふじい・さとし)/元内閣官房参与・京都大学大学院教授。1968年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(公共政策論、都市社会工学)。京都大学工学部卒、同大学院工学研究科修士課程修了後、スウェーデン・イエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学教授を経て、現職。第二次安倍内閣で内閣官房参与。近著に『日本を喰う中国』など。

※週刊ポスト2022年2月18・25日号

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