日本のテレビの歴史に残る伝説的な音楽番組『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)。この『夜ヒット』は、1968年11月から1990年10月まで、22年にわたって放送され、最高視聴率42.2%を記録した人気番組だ。毎回生放送で多彩なアーティストが楽曲を披露した。
西城秀樹さん(享年63)の3回忌を迎えた2020年5月には、『夜ヒット』の出演シーンなどをまとめたDVD『西城秀樹 IN 夜のヒットスタジオ』(ソニー・ミュージックダイレクト)が発売されている。これには、1975年5月から1987年12月の計172回の中から120の出演シーンが収録されている。関係者らが当時の西城さんの様子を振り返る。
西城さんは「ワイルドな17才」をキャッチフレーズに1972年にデビューしてトップアイドルの仲間入り。郷ひろみ、野口五郎とともに「新御三家」と称された。デビュー当時はジャンプスーツをベースにしたステージ衣装を身に着けていたが、その衣装を担当した塚田伸夫さんは、ソウルミュージックのイメージで作ったという。
「グループ・サウンズのブームが終わり、当時のトップアイドルは伊丹幸雄。彼はセーラーファッションだったから、ヒデキはもっとワイルドにした方がいいと思ったんです。
デビュー前にぼくの車に乗せて移動していたとき、西麻布の交差点で車が止まると『ぼくのことを大事にしてくださいね』って言うんです。びっくりして顔をまじまじと見ると、『絶対、スーパースターになりますから』って真剣な顔で。ぼくはほかの歌手の衣装も手掛けていましたから、ものすごく負けず嫌いな彼は『自分を一番に考えてほしい』と訴えてきたんです」(塚田さん・以下同)
西城さんは、ステージに立つたびにほかの歌手たちと観客の拍手の大きさを比べ、どう演出すればより拍手がもらえるようになるのかスタッフに相談するなど、勉強熱心だったという。そして、あっという間にスターとなっていった。
「若い彼の魅力は、“汗”。流れる汗を照明で光らせようと、胸元を大きく開けた衣装を作ったこともありました。コンサートのステージに立つヒデキの胸元が狙い通りにきらめき、男らしさと繊細さが表現できる衣装にしました」