1983年10月01日、会社訪問の解禁で、会社説明会に訪れた学生ら。かつては対面でないと不可能だったことが今はオンラインでできる(イメージ、時事通信フォト)

1983年10月01日、会社訪問の解禁で、会社説明会に訪れた学生ら。かつては対面でないと不可能だったことが今はオンラインでできる(イメージ、時事通信フォト)

 もともと就活生の間では、交通費や宿泊費などの就活にかかるコストが非常に負担となっており、地方の学生は時間がとれず参加できないという例も多かった。ところがオンラインで開催するようになったことで、移動や宿泊の心配をせずとも参加できるようになり、エントリーの敷居が下がったというわけだ。これは企業側から見ても、遠方に住んでいる学生にもアピールできるメリットがあると考えられるのだ。

コスパ重んじるこの世代ならではの意見

 前出の2023年春就職希望の大学生・大学院生会員を対象とした調査によると、「企業の採用フローがコロナ対応(オンライン化)していない場合、志望度が下がる可能性があるか」について聞いたところ、「はい」49.7%、「いいえ」50.3%と意見が分かれる結果となった。オンライン化していないことで志望度が下がる学生が半数いることは、企業も重くとらえるべきだろう。調査結果で紹介されているコメントに、彼らの本音があらわれている。

「第一志望でもない限り、そのような企業に足を運ぶのは費用対効果が少ない」は、いかにもコスパを重んじるこの世代ならではの意見だ。デフレで安売りが当たり前の世の中で育ち、ペイ(支払い)よりもリターン(儲け)を多くしなければと常に考えながら暮らしてきた人たちであれば、やむを得ない思考パターンともいえる。これは広く社会的な問題でもあるので、就職活動の何かを変更すれば解決するというものでもないだろう。

 しかし、オンライン非対応であることが「前時代的」「将来的にも時代に柔軟に対応できなさそう」「社員の健康を軽んじている=大切にしてくれない可能性がある」と学生たちにうつっていることには、耳を傾ける価値があるのではないだろうか。

 コロナ禍はまだ終わりそうにない中、学生たちは対面の良さを改めて感じつつも、オンラインのメリットも感じ、柔軟に対応し、デジタルツールも使いこなしている。一方で、仕事は基本的に対面ですすめるものなのだから、コロナ禍が明けたらオンラインの存在感は従属的なものになっていくはずと信じている働く大人は今も少なくない。だが、その利便性や効率、向いている場面などが共有されてきたいま、オンラインが完全になくなることはなさそうだ。すでにオンラインの向き不向きを把握して使い分けている学生たちのこのような柔軟さは、大人世代も見習うところがあるのではないだろうか。

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