コロナ行政の舵取りをするはずのワクチン担当大臣が、“とても使い物にならぬ”と除け者扱いに。それでうまくいくならまだしも、3回目接種は遅々として進まず、徐々に政権批判が高まりつつある──。
ワクチン担当相には厚労、総務、防衛、経産の各省や自治体にまたがる縦割り行政を抑え込んでワクチン配分や接種体制を調整する政治力が必要で、経験が浅い堀内詔子氏にはそもそも荷が重かった。国会答弁に立てばフリーズしてしまい、岸田首相や後藤茂之厚労相が代わりに答弁する場面が続いている。
元時事通信政治部長で政治ジャーナリストの泉宏氏は、岸田首相の「油断」を指摘する。
「最大の失敗は岸田総理が五輪相の堀内氏にわざわざワクチン担当を兼務させたことです。総理自身、堀内氏にワクチン担当の能力があると考えていたかどうかは怪しい。というのも臨時国会では質問の多くに総理か後藤厚労相が手を上げて答弁していたからです。
おそらく岸田氏は総理に就任した時点で、第6波がこんなに早く拡大するとは思っていなかったんでしょう。甘い見通しで人選を誤り、今日の事態を招いてしまった」
それだけではない。
「前任者の河野太郎・前ワクチン担当相は行革相と規制改革担当の内閣府特命担当大臣を兼務し、法律上も各省庁に睨みが利く強い権限が与えられていたが、堀内氏は行革相でも特命担当大臣でもない。ワクチン担当の辞令だけで実質的な権限はない」(官邸スタッフ)
これでは役人が言うことを聞くはずがない。その証拠に、堀内氏が就任するや役人たちは河野時代のワクチン接種推進組織を潰していた。前任の河野氏はツイッター(2月5日)で岸田政権のワクチン行政の内実をこう暴露している。
〈堀内大臣のことをいろいろ言う人がいるが…私の時と比べてワクチンチームの人数が激減。私の時はチームは大臣室の隣にいたけれど、今は隣の建物の地下。厚労省が情報を出さない。最終的な決定権がない〉
堀内氏に権限を与えずに“みそっかす大臣”に追いやったのは岸田首相その人だったのである。