「あまり思い出したくないのですが、要求された通りのことをしようとすると、どうしてもマスクを外さなければならない場面がありました。顔は映ってない、モザイクだってかけるとしきりに言われましたが気になってしょうがなかった」(Kさん)
撮影は2時間ほどで終わり、帰り際に封筒に入った現金12万円を手渡された。電話番号や本名は最後まで聞かれなかったが、Kさんも教えるつもりはなく「これっきりだ」と思い、マンションを後にした。親やきょうだいに迷惑をかけずに済んだ、Kさんはそう安堵していたが、それから三ヶ月ほど経ったある日、Kさんに慌てて電話をかけてきたのは、他でもない実の弟だった。
「姉ちゃん、変なビデオに出ているだろうと言われて、目の前が真っ暗になりました。思春期の弟ですからそういった映像を見る機会も多いのか、友人から情報が回ってきた、と心配しているとも怒っているとも思える口調で教えてくれたんです」(Kさん)
転載されて今も残る動画や画像
弟が送ってきた画像を見て、Kさんはその場に崩れ落ちた。あれだけ「顔は映らない」と言われにも関わらず、なぜかビデオ販売サイトとは別のサイトに、自身の顔がハッキリと掲載されていたのである。
「年齢や名前、それに肩書きなどは適当でしたが、間違いなく私の顔。何が起きているのかわからずパニックになり、丸一週間、ベッドから起き上がることもできませんでした」(Kさん)
結局、弟は親にも相談していたようで、心配した母親から警察や弁護士に相談するよう勧められ、結局親の知人である専門家に対応を依頼。顔が写っていたと抗議をしたところ、すぐに販売は停止されたというが……。
「映像は確かに販売されなくなりました。でも、弟が教えてくれたサイトからはいつまで経っても私の顔写真が消えなかったんです」(Kさん)
その後Kさん自身も、あの男にDMで事情を説明するよう何度も求めたが「知らない」の一点張りで、Kさんはさらに思い詰め、いまも睡眠薬が手放せなくなるなど、心身共に疲弊したままだ。