試験を受けている様子をカメラで確認できるようにし、さらにそのときの目線や手の動きも分かりやすいように、Zoomで表示される画面が小さくなりすぎないよう人数を絞って参加させる。ライブで気づけなくとも、後日、録画したその映像を確認することで不審な行動があれば指摘できるというわけだ。ここまで悪意を前提にした対策を立てねばならないのかと驚くかもしれないが、悩まされているのは試験だけではない。
大学では以前から、論文の盗用やレポートのコピペ問題、ネット上にある百科事典や誰かのテキストをコピー&ペーストして完成させる盗用や剽窃も問題視されている。オンライン授業の場合、成績評定にはレポートなどが重視されることが多いが、それもコピペで済まされていることがあり、不正防止は大きな課題となっているのだ。都内の私立大学で教えている教員は、その仕事がかなり他の業務を圧迫している事情を打ち明ける。
「このレポートはコピペだなというのは、読めば分かります。たいてい、途中で文体が変わるなど全体的に不自然に仕上がっていますし、もっと雑なときは、途中でフォントが変わっていることもあります。先輩から譲り受けたファイルのプロパティに別人の名前が残っているなんてこともありました。そういう学生には、いきなり失格の連絡をするのではなく、自力でレポートを書き直すようにまず連絡しますが、それでも自分が書いたのだと頑張られてしまう場合は、誰が見ても分かる証拠をつけて示さないとならない。数が少なければ自分でやりますが、数十人を期日内にとなると一人でさばききれません」
そこで、コピペを判定するソフトやサービスが利用されている。たとえばあるレポートなどの盗用を判定するソフトは、2018年7月末までに881機関(教育機関では610機関)でレポートや論文のコピペチェックに活用されているという。
学生によっては、悪気なくコピペをしてしまっているケースもある。引用ルールの徹底により悪意のない剽窃を防ぐとともに、コピペは不正ということを徹底して周知する必要があるのだ。
「卒論代行10万円前後」で請け負う若者たち
このようなネットを使った不正が若者の間で広がっている理由は、彼らがスマホネイティブであり、「調べれば何でもわかる」「ネット上ですべて済む」環境で育ってきた影響が大きいのではないだろうか。引用とは何かを知る前に、スクショやコピペで他人の著作を自分のものであるかのようにSNSで簡単に発信でき、それを咎められるよりも、友人たちから賞賛されることを繰り返し経験すると、不正についての認識が歪みやすいだろうし、自分で一から考えて生み出すのはコスパが悪いと敬遠しがちになるだろう。