同業他社の人が正直に病院に行ってコロナ認定をされた話が伝わってきたんだそうな。で、数人のお客さんが濃厚接触者になって、みんな2週間の隔離生活になったんだって。
「誰が悪いわけではないとはいえ、『自分と接触したせいで大きな迷惑をかけた』って、そりゃあ落ち込むわよ。もちろんウチだって家族以外に接触した人がいたら、そんなことは言っていられない。病院で検査したと思う。でも、保育園でクラスターが起きた前後の数日は、人の出入りがなかったのよ」
こうしてK子一家は家業はすべてリモートにして、何事もなく10日が過ぎた。
「一家閉鎖。自主隔離」と宣言して、1人だけ症状が出なかったTちゃんは、咳き込む家族を尻目に「まぁ、病は気からって言うからな」と高笑いしていたそう。
で、家族6人の体調が落ち着いて数日後の朝のこと。
「Tちゃんがベッドから起きられなくなっちゃったのよ。ようやく起き出したかと思えば、トイレにこもって出てこない。ひどい下痢に見舞われて、ご飯ものどを通らない。水を飲んでもすぐに出る。これが1週間続いて日に日にやせていっちゃったの」とK子がため息をつく。もちろんK子は「お願いだから病院に行って」と頼んだけれど、こうなると、ある種の男は手がつけられなくなるのよね。
「病院なんか行っても治るかよ。家で寝ていれば少しずつよくなるんだから、心配するな。万が一、オレが死んでも保険金が出るだろ。うるせいッ。オレの体はオレがいちばんわかるんだ。いまは回復期なんだよ。下痢? 好転反応だよっ!」
こんな夫が一日中家にいたら、そりゃあ参るって。
てか、58才で胃がんで亡くなった私の年子の弟も、同じ病でその翌年逝った父親もそう。「オレの体はオレがいちばんわかる」と言ったかと思えば、「死ぬときは死ぬんだ」と威張ってみせたあげく、終末期になるまで病院に行かなかった。聞けば、こういうケースはウチのアホ家族だけじゃない。そして、そう言うのは例外なく男。
男女差の話をするとややこしいことになるけれど、あえて言えば、自分の体に関して客観性がまるでなくなるのは決まって男だね。