「予告先発がファンの楽しみを奪ってしまっている面もあると思いますよ。日本ハムの新庄剛志ビッグボスは開幕投手候補について『13人くらいいる』と発言しており、本当に誰が来るのかわからない。それでも、予告先発制度なので、前日までにはわかってしまう。サプライズ度やドキドキ感は半減どころか、8割くらい少なくなりますよね。
予告先発がセ・リーグになかった2004年、就任1年目の中日・落合博満監督が開幕投手に3年間一軍での登板がなかった川崎憲次郎を抜擢した時、ナゴヤドームが驚きの声で溢れ返りました。予告先発は“筋書きのないドラマ”と言われるプロ野球の筋書きを作ってしまっている点も忘れてはいけない」
名将・野村克也監督が「弱い球団には不利」と指摘した予告先発。3年連続でパ・リーグ5位に沈んでいる日本ハムにとっても不利に働く可能性があるが、新庄ビッグボスはどう対応するのだろうか。
「新庄ビッグボスのことですから、予告先発制もうまく利用するとは思います。例えば、右投手を先発させ、打者1人に投げ終えたところで、左投手に変えるなんてこともあると思います。意外な采配でファンを楽しませてくれるのではないでしょうか」
金田監督は奇襲失敗、野村監督は成功
パ・リーグが4月から8月までの日曜日を予告先発としていた1990年、ロッテの金田正一監督が奇襲を敢行している。8月5日のオリックス戦(西宮球場)で、左の中継ぎである今野隆裕を今季初先発させたものの、わずか2打者4球で右腕の小川博にスイッチした。この時は、小川は打ちこまれ、ロッテは3対12と大敗を喫した。
同じ年、予告先発制度のないセ・リーグではヤクルトの野村克也監督が10月1日の広島戦(広島市民球場)で、右投手の郭建成を先発させた。『3番・ライト』に偵察要員を入れていた広島の山本浩二監督はそれを見て、左打者の長内孝に代えた。野村監督は郭が先頭の野村謙二郎を1球で打ち取ると、左投手の加藤博人に交代させた。加藤は6回まで1失点に抑え、後を継いだ内藤尚行が3イニングを締めて、3対1で勝利している。