これ以上ない仕上がりだった。選抜の5日目に対戦する相手は、塗木が神宮大会で視察した関東大会の王者である明秀日立だ。塗木監督は言う。
「強豪には違いないですが、大野が普通に投げれば勝負できる。大野は物怖じするタイプではありませんが、あり得ないことが起こるのが甲子園なんじゃないんですか。稼頭央が夢中になって白球を放れるか。私はそれを演出するだけです」
大野は対戦したい打者として花巻東の1年生スラッガー・佐々木麟太郎の名を挙げ、優勝候補筆頭の大阪桐蔭とも対戦したいと話していた。
勝ち上がれば2回戦で花巻東、準々決勝で大阪桐蔭と対戦の可能性がある。離島で育った大高ナインによる「大島旋風」を期待するのは、島民ばかりではないだろう。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/ノンフィクションライター。1976年、宮崎県生まれ。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。著書に『永遠のPL学園』(小学館文庫)。2016年、同作で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。
撮影/比田勝 大直
※週刊ポスト2022年4月1日号