双葉山以来、86年ぶりの新関脇の優勝で幕を閉じた大相撲春場所。千秋楽の本割では2敗で並んでいた高安とともに敗れた若隆景だが、優勝決定戦では土俵際まで押し込まれながら粘り腰で耐え、逆転の上手出し投げで賜杯を手にした。その後、NHKの大相撲中継では放送されなかったが、優勝力士には“大量の副賞”が授与された――。
高安は初日から白星を重ねて優勝争いのトップを走り、11日目の若隆景との直接対決で土がついたが、13日目まで単独トップだった。14日目に正代に敗れて若隆景に2敗で並ばれ、千秋楽の本割、そして優勝決定戦と終盤に3連敗して初優勝を逃した。
「高安は昨年の春場所でも12日目まで単独トップを走りながら、終盤に3連敗。なかなか賜杯に手が届かない高安だが、優勝と準優勝とでは天と地ほどの差がある。歴代優勝者として名前が残らないのはもちろん、幕内の優勝賞金は1000万円だが、準優勝は0円。ゴルフのようにプレーオフに敗れても賞金がもらえるわけではない。そして、数々の副賞が受け取れるかという違いも大きい」(協会関係者)
NHK中継は2分延長して若隆景のインタビューで放送が終了したが、その後も会場では30分以上も表彰式が続いた。
モンゴル国総理大臣賞、日仏友好杯、メキシコ合衆国友好楯、アラブ首長国連邦友好杯、ハンガリー国友好杯、チェコ国友好杯と各国からの表彰があり、さらにNHK金杯、優勝額、造幣局理事長賞、近畿各府県の知事賞と続いていく。
観客たちは、表彰式の前の君が代斉唱、理事長からの賜杯拝戴、優勝旗授与、内閣総理大臣賞授与、優勝力士インタビューまでは座って見ているが、それが終わると一斉に席を立つ。コロナ禍では優勝パレードが行なわれないこともあり、その後の表彰式に残っているのは2割程度。場内は閑散としており、土俵周りの溜席にいる東西会のメンバーですらほとんど残っていない状態で、賞を出している立場としては複雑な思いだろう。
NHKで中継されないし、スポーツ紙でも報じられないのであまり知られていないが、各賞の副賞は豪華だ。金一封というのもあるが、ピエール・エルメ・パリ製マカロン詰め合わせ(日仏友好杯)、コロナビール1年分(メキシコ合衆国友好楯)、ガソリン1年分(アラブ首長国連邦友好杯)、ティーセット(ハンガリー国友好杯)などが贈られ、各国の代表者が母国語や慣れないながらも一生懸命話す日本語で表彰状を読みあげる。
その後、地方自治体や企業の表彰式と続く。春場所では大阪府知事賞、和歌山県知事賞、奈良県知事賞、湯浅町長賞が贈られるが、こちらの副賞はさらに豪華だ。「地酒72本、青唐辛子味噌120本、岩おこし1000枚、551蓬莱豚まん370個、究極の和プリン144個、小倉屋山本だしパック750パック、河内もなか350個、醤油72本、黒糖400袋」(大阪府知事賞)、「味一みかん、あら川の桃、新秋柿のプレミア県産果物」(和歌山県知事賞)、「ちゃんこ大和づくし具材300人前、三輪素麺300人前」(奈良県知事賞)、「醤油1年分」(湯浅町長賞)。恒例の宮崎県知事賞の「宮崎牛1頭、旬の果実1トン」も贈られた。
表彰には各府県の知事が登場。大阪府も人気の吉村洋文知事がプレゼンターで土俵に上がり、「若隆景渥殿」を噛んで少しの笑いと拍手が起こったが、観客席に人はまばらで盛り上がりに欠けた。吉本興業賞ではなんばグランド花月1年間フリーパスを漫才コンビ「ザ・ぼんち」のぼんちおさむが登場したが、「おさむちゃんで~す」のギャグも観衆が少ないとウケに乏しい。前出の協会関係者も「せっかくタレント揃いなのにもったいない……」と残念がる。