聖隷の球児たちの気持ちは「空回りした」と上村監督は分析

聖隷の球児たちの気持ちは「空回りした」と上村監督は分析

県地区予選にテレビカメラが

 1月28日のセンバツ出場校の選考委員会において、昨秋の東海大会で準優勝していた聖隷はまさかの落選となり、ベスト4に終わっていた大垣日大が優勝した日大三島(静岡)に次ぐ東海地区の2校目に選ばれた。東海大会の準優勝校がセンバツに出場しないという、東海地区で44年ぶりに起きた選考を巡っては、その是非が大論争となった。

 私は選考に携わった東海地区の選考委員を訪ね歩き、選考委員長を務めた鬼嶋一司氏が議論を主導して最後は大垣日大を推し、出場校が決したことなどを明らかにしてきた。大垣日大を選出した理由として鬼嶋氏が選考委員会の総会やその後の取材で明かしたのが、上村監督も口にした「個人能力の差」「投手力の差」「甲子園で勝てるチームであるか」だった。

 落選の直後、独占インタビューに応じた上村監督は、選考への憤りに近い感情を口にしていた。

「100%信じていたものが、なくなってしまった。生徒たちのショックは計り知れません。少しずつ(鬼嶋選考委員長が明かした)落選の理由が分かってきて、私も“どうしてこんなことが起きたのか”“なぜなのか”という考えが消えません」

 私は聖隷の落選からこれまで5度にわたって同校のグラウンドを訪れた。当初から「なかなか眠れず、食欲もない」と話していた上村監督は、学校長としての立場もあり、いつしか憤りの感情を表出することはなくなった。「(日本)高野連がこの騒動をどう受け止めているのか、それだけを知りたい」と話すのみだった。

 その一方で、上村監督が案じていたのが、生徒達のこれからだった。

「春の静岡大会を迎えれば、彼らは好奇の目にさらされる。勝ち進めばいいんでしょうけど、もし負けた時に、彼らがどんな反応をするのか。それが監督として、あるいは学校の校長として恐れることです。スクールカウンセラーに、いろいろと相談もしています」

 3月19日に開幕したセンバツも日程が消化され、いよいよクライマックスを迎えようとしている。そんな中、聖隷が臨んだのが春季静岡県西部地区予選だった。もし、聖隷がセンバツに出場を果たしていたならば、この予選は免除されていた。初戦で敗れれば敗者復活にも回れず、春の大会は即刻終了となり、夏の静岡大会はノーシードで戦うことになる。聖隷が対戦したのは常葉大菊川。近年は力を落としているとはいえ、静岡を代表する強豪私学であり、今年のチームもプロも注目する豪腕を擁す。

 通常、西部地区予選は報道陣も観客も、寂しいものだ。ところがこの日は、バスで移動してきた選手の球場入りからテレビカメラが追いかけ、筆者の目でおそらく1500人近い観客が訪れていた。

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