ベスト4が決まっていよいよ大詰めを迎えているセンバツ甲子園だが、今年はその「選考」を巡っても大きな議論が巻き起こった。昨秋の東海大会で準優勝してセンバツ行きが“当確”とみられていた聖隷クリストファー(静岡)が落選し、ベスト4だった大垣日大(岐阜)が選出されたことを巡る騒動だ。結局、聖隷の出場は叶わず、センバツ期間中に春の静岡大会の地区予選に臨むこととなった。本誌・週刊ポストで聖隷落選問題を追いかけ、選考委員や日本高野連会長の独占取材をレポートしてきた柳川悠二氏(ノンフィクションライター)が、春の静岡大会の会場で見た光景とは──。
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まるで高校野球の聖地・甲子園球場と、静岡県の四ツ池公園内にある古びた浜松球場で起きていることがシンクロしているようだった。
プレイボールの時刻は共に3月27日の朝9時。先に2点を奪われ、中盤までに0対5と劣勢を強いられたことも一致する。そして、両校は共に敗れた。
センバツの2回戦を戦っていた大垣日大(岐阜)は2対6で星稜(石川)に屈し、春季静岡県西部地区予選の初戦で常葉大菊川と戦った聖隷クリストファー(静岡)も、0対10の7回コールドで早くも春の戦いを終えた。
舞台は大きく異なれど、両校が同日、同時刻に試合を戦ったのはなんとも不思議な因縁だろう。
その日、聖隷こそセンバツ出場に相応しい学校だと考えて取材を続け、「33校目」としての出場を認めるべきだと主張してきた私は当然、浜松球場に向かった。試合後、ベンチを引き上げてきた聖隷の上村敏正監督に労いの言葉をかけると、「並の高校生になってしまいました」と声を落とし、肩も落とした。
「もともと力はないんだけど、センバツの代表校に落選し、彼らは『弱い』と評価された。(落選の理由として)甲子園で勝てないとか、個々の能力がないと言われたものだから、なんとかしなきゃいけないという気持ちが空回りしていましたね」
東海大会の決勝にまで進出した昨秋の彼らには、敗北への恐れが微塵もなかった。
「静岡大会だろうが、東海大会だろうが、“弱いんだから負けたって仕方ない”と思いながらぶつかっていった。ところが今日は、“やっぱり弱かったと言われたくない”という気持ちが勝ってしまった。落選からおよそ2カ月、僕なんかよりよっぽど精神的に強く、頑張っているなあと思いながら彼らの練習を見ていましたが、やっぱりそこは高校生ですね」