近頃は、女性落語家の活躍が目覚ましい。男性落語家にはない発想の転換も大きな魅力になっているという。また、演じ手だけでなく女性の落語ファンも増加。その人気が拡大しているようだ。そこで、第一線で活躍する三遊亭遊かり(48才)におすすめの落語を紹介してもらった。
日本酒の販売員などを経て、38才で入門したという異色の落語家、三遊亭遊かり。
「とにかく寄席が好き。寄席にいたくて落語家になりました(笑い)。だから、長屋のご隠居さんや八っつぁんがただ他愛ないことをしゃべっているだけのような、寄席でよくかかる噺が好きです。ご近所同士仲がいいのが好きなんです」(遊かり・以下同)
その観点で選んだのが、「道灌」「親子酒」「ちりとてちん」だ。
「『道灌』は、前座時代に取り組む基礎中の基礎で、やるのは苦手ですが(笑い)、聴くのは大好きです」
そして、「『親子酒』は、酒に目がない大店の親子が、禁酒の約束をする話」と言って、実際に目の前でごくごくと、のどを鳴らしてお酒を飲むしぐさを演じてみせる。実に、おいしそうな飲みっぷり。
「そりゃあ酒好きですから。酒を飲む噺は、誰にも負けたくないですね(笑い)」
「ちりとてちん」は、いつも知ったかぶりをする嫌みな男へご隠居さんが仕返しをするという噺だが、遊かりはこれを嫁姑のバトル物語に作り変え、昨年、「北とぴあ若手落語家競演会」で2位となる奨励賞を受賞した。
「特に、女性にはリアルな問題なので、毎回とても共感していただけます。寄席でもよくかける噺なので、機会があったらぜひ聴いてください!」
彼女の大師匠である三遊亭小遊三からは、「落語は笑うもんだ」と言われた。
「師匠の遊雀からも、『どんな手を使ってでも笑いをもぎ取れ』と教わってきたので、1人でも多く笑っていただける噺で勝負をかけています」