スポーツ

厳格だったV9時代の川上監督 ホームランを打ってもサインと違えば罰金

9年連続日本一を成し遂げた川上監督(中央、写真/共同通信社)

9年連続日本一を成し遂げた川上監督(中央、写真/共同通信社)

 今年もプロ野球が開幕。ヤクルトとオリックスはリーグ連覇を狙うシーズンとなるが、プロ野球史上に残る金字塔が巨人の9連覇、世にいう「V9」だ。そんな常勝軍団を率いた名将・川上哲治のとにかく厳しい姿勢は、チーム内外に知られていた。(文中敬称略)【全4回の第2回。第1回から読む

 * * *
 当時の選手に川上について尋ねると揃ってまずは“厳しさ”に言及する。V9時代、小柄ながらも闘志あふれるプレーで「豆タンク」と呼ばれたのが、広岡達朗のあと遊撃手のレギュラーの座をつかんだ黒江透修である。黒江は川上・巨人について「罰金が多くて参った」と振り返る。

「バント失敗、エンドラン失敗は3000円の罰金。ノーアウトや1アウトで三塁にいるランナーが返せないと5000円の罰金でした。サイン見落としは1万円。当時の1万円は大きいですよ。

 罰金は毎月の振り込みから引かれていましたね。得点に絡む活躍には賞金もあったが、賞金は給料にプラスされるので所得税が引かれる。罰金はきっちりマイナス1万円だけど、1万円の賞金は税引きされて9000円なんです(苦笑)」

 ショートの黒江やセカンドの土井(正三)は守備のサインが多く、罰金の対象となることが多かったという。ホームランを打っても、サインと違っていたら罰金だった。当時、似たような仕組みは他球団にもあったものの「他のチームにあった情状酌量が、巨人はなかった」(黒江)という。

「結果オーライでいいなら、監督の采配は必要なくなる。それが川上監督の方針だった。巨人の強さの秘密ですね。門限も厳しかったですよ。遠征に行って変な負け方をすると、“今日は外出禁止”とかね」(黒江)

 投手も対象となるケースが数多くあった。川上・巨人の2年目からチームを支えてきた“エースのジョー”こと城之内邦雄はこう証言する。

「川上監督はすぐに罰金を取っていたから、みんな全力でやる。気が抜けないんだね。ピッチャーの場合、2ストライク・ノーボールから打たれると罰金だった。それで罰金を取られて頭に来て、(ツーナッシングから)わざとバックネットに向けて投げたことがある(苦笑)」

関連キーワード

関連記事

トピックス

インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
PTSDについて大学で講義も行っている渡邊渚さん(本人提供)
渡邊渚さんが憤る“性暴力”問題「加害者は呼吸をするように嘘をつき、都合のいい解釈を繰り広げる」 性暴力と恋愛の区別すらできない加害者や擁護者への失望【独占手記】
週刊ポスト