《だいたい好きってなんだよ。ここからが人間としての好き、ここからが友だちとしての好き、ここからが恋人としての好き。そんな風にはっきり分けられるもんじゃなくて、どの好きもグラデーションになってて境目なんてよくわからない》
「恋愛はしてもしなくてもいいものだと思う。そもそも“○○しなきゃ”という考えは自分のことも他人のことも縛ってしまう」と、大前さん。
恋愛はすべきもの、結婚して当たり前、子供を持つのが当然――そんな価値観に縛られてきた世代が、圭吾のような繊細な感性を持つ若者たちにどう接し、理解していけばいいのだろうか?
「どれだけ年齢が離れていても、人間関係やコミュニケーションの難しさといった根本的な悩みは共通する部分があると思う。それを世代が違うからと枠組みを作ってハードルを設定してしまうのではなく、わからないことはわからないと正直に言って、腹を割って話すことが大事な気がします。やっぱり、平和に生きるのがいちばんですから」(大前さん)
◆大前粟生(おおまえ・あお)
1992年、兵庫県生まれ。2016年、「彼女をバスタブに入れて燃やす」が「GRANTA JAPAN with早稲田文学」公募プロジェクト最優秀作に選出され小説家デビュー。『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』『おもろい以外いらんねん』(ともに河出書房新社)など、次々に話題作を生み出す。