ウクライナで現地取材を続けるジャーナリスト・水谷竹秀氏(写真/本人提供)

ウクライナで得た情報や現地の人の声をジャーナリストの水谷竹秀氏は、どう発信していくか、熟慮している(写真/本人提供)

池上:何かあれば武器を持つけど、本音では人を殺したくないというのが、まさに人間の本心です。

水谷:時間をかけて人間関係を築くことで、初めて聞くことができる答えがあると思います。

池上:まったくその通りです。私はテレビの仕事を長くしていますが、テレビは「ここが爆撃されました」と戦闘報告をして住民にマイクを向ければ取材が終わりますが、ノンフィクションライターはそうはいきません。

水谷:現地のウクライナ人と長く接すれば接するほど、彼らが何を考えているか少しずつわかってきます。それをどう伝えるかを模索しています。

SNSでは簡単に騙される

池上:「21世紀の情報戦」では、SNSを利用したフェイクニュースが溢れることも大きな特徴です。日本でSNSばかり見ている人は簡単に騙されてしまう危険がある。

水谷:いまや日本人の情報源はSNSが主流になり、SNSを使いこなした者が影響力を持ちます。今回は外務省の渡航中止勧告などもあり、日本の大手メディアが現地に入るのが遅くなったこともSNS偏重になった一因でしょう。

池上:ロシアが平然と嘘をつくことも目立ちます。ロシアのラブロフ外務大臣は「ロシアはウクライナを攻撃していない」と発言し、駐日ロシア大使は「ブチャの虐殺はでっち上げ」と強弁した。こうした嘘はすぐ見抜けるけど、巧妙なフェイクニュースになると見分けるのがなかなか難しい。

水谷:一方でウクライナからの情報に少しでも疑義を表明すると、「ロシアの肩を持つのか」と叩かれる雰囲気も感じます。

池上:戦争にいたる要因はウクライナ側にもあったと指摘すると、猛バッシングされます。「ウクライナが善戦している」という言い方も、「負けることを前提としているのか」と言われる。どう報じるのかがすごく難しい戦争です。

水谷:凄惨な写真や映像をどこまで報じるべきかも議論されています。

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