伝統色を使い続けていることからも、阪急が座席に対して特別なこだわりを持っていることは窺える。しかし、それだけでは阪急のシートがどれだけ快適なのかはわからない。
「ゴールデンオリーブの表地に使用している山羊の毛は、起毛の復元力が高く、汚れにくく、毛抜けも少なく、感触がいいのが特徴です。起毛の長さは0.5ミリメートル単位で調整して、手触りがよいと感じる現在の長さに決めました」(阪急電鉄広報部)
また、阪急は高品質なシートを設置するだけではなく「埃などが起毛につきやすいため、ブラシ付きの掃除機で丁寧に清掃しています」(阪急電鉄広報部)とメンテナンスにも細心の注意を払っている。
阪急はモヘア100パーセントのモケット
座席に快適性を追求する鉄道会社は、阪急だけではない。日本国内の鉄道会社は座席の快適性を高める工夫に余念がない。ふかふかな座席を実現するため、鉄道各社は織物メーカーと協力してモケットと呼ばれる織物には特に力を入れる。
モケットとは、化学繊維やウールなどのパイルを織り出し、布の片面に模様をつくる織物のことをいう。モケットは乗客の肌に直接触れる部分でもある。肌触りは座り心地にも連動する。それだけに、手を抜けない。