全身の様々な臓器に炎症が起こり、コブや腫瘤が発生する自己免疫疾患をIgG4関連疾患という。免疫の異常で発症し、免疫グロブリンIgG4が増加する。過去に膵臓がんと診断された症例で、IgG4関連疾患のひとつである自己免疫性膵炎だったのが判明したことも。結局、必要のない手術が行なわれた。ステロイドで治る良性の病気なので、専門医での確定診断が大切だ。
体に痛みを伴わないコブや腫瘤が発生すると高齢者はまず、がんを疑う。それらの症例の一部に自己免疫疾患のIgG4関連疾患が混ざっているのがわかってきた。このIgG4関連疾患は2000年代になり認識された病気で、それまでは発生臓器ごとに様々な病名が付き、原因不明の疾患とされていたのだ。
IgG4関連疾患は硬膜、下垂体、涙腺、唾液腺、甲状腺、乳腺、肺、膵臓、胆管、胆のう、肝臓、腎臓、前立腺、消化管、リンパ節など全身の臓器に発症する。これらの臓器にリンパ球とIgG4陽性形質細胞が浸潤し、線維化によってコブや腫瘤ができる。
がん・感染症センター都立駒込病院の神澤輝実院長に話を聞いた。
「私の専門は胆管と膵臓なのですが、膵臓がんと類似した画像所見を示す自己免疫性膵炎の研究をしている中で、2003年に全身性の自己免疫疾患はIgG4関連疾患であるという新しい概念を提唱しました。その後、医療現場で他臓器の疾患にもIgG4関連疾患が発見され、広く注目されるようになったんです」
IgG4関連疾患の病因は解明されていないが、環境因子と遺伝的要因に免疫反応の異常が重なり発症するのではないかと推察されている。一般に自己免疫疾患の膠原病は若い女性に多いが、この病気は特に高齢男性に発症する。
以前はミクリッツ病と診断されていた両眼の涙腺が腫れる病気もIgG4関連疾患と判明。ただ涙腺や唾液腺の腫れは外からわかるが、体内の臓器での発症は見えないため、腫瘤がかなり大きくなり症状も出て、初めて発見される症例が多い。
他にも自己免疫性下垂体炎、間質性腎炎、後腹膜線維症、大動脈周囲炎などと呼ばれる疾患の一部もIgG4関連疾患である。