「テストステロンは筋トレによって増やすことができます。体を動かすことでドーパミンやセロトニンなど、やる気の向上や精神安定につながるホルモンも増える。男性ホルモンが増えれば、男らしさや自信を取り戻すことにもつながります。
早朝に散歩するのもおすすめです。日光を浴びて体を動かすことで、体内時計や自律神経が整います。1か月続けてみて、それでも症状が悪化する一方であれば、病院を受診してほしい」(樺沢さん)
ただし、筋トレは体への負荷がストレスになるため、すでにうつ病の傾向がある人には逆効果になるケースも。立命館大学産業社会学部教授で家族社会学者の筒井淳也さんは「対策は人それぞれ異なる」と前置きした上で、この世代の男性たちにとっては、妻が男らしさを尊重することが大切だと語る。
「根源的な原因の1つは、男らしさが失われていく恐怖や喪失感です。人によって、叱咤激励が必要な場合もあれば、優しく寄り添うことが必要な場合もありますが、いずれも“男らしくないわね”“若い頃はできたのに”といった言葉は禁句。もし夫から悩みや不調を打ち明けられたら、じっくり聞いてあげてください」(筒井さん)
夫自身が不調に気づいていないと感じたときは、繰り返し声をかけてみることだ。
「“疲れてる?”と聞いても、たいていは“大丈夫だ”と言われるはず。一度ではなく、しつこく聞いてください。“顔色がよくないわよ”“元気がないように見えるのだけど”など、言い方を変えて、本人に自覚を促すのも1つの手」(樺沢さん)
大切なのは、夫ひとりに抱え込ませないことと、夫婦だけで立ち向かわないこと。最近は男性更年期専門外来のある泌尿器科や内科も増えており、政府や自治体も、中年期専門の相談窓口を設けている。
「夫婦でホルモン検査を受けてみるのもいいでしょう。ホルモンの値を知ることで、食事や運動など、早い段階から具体的な予防に取り組むことができます」(石川さん)
心、体、職場、家庭—─中年期は、これらに大きな変化が起こる。向き合い方を知って、乗り越えてほしい。
※女性セブン2022年6月9日号