採用活動を中止する企業が続出したコロナ禍の就職戦線で、志望会社の内定を夢見る一人の女子大生が詐欺師の毒牙にかかった。「縁故採用」をちらつかせて近づいた男・西山の要求は、徐々にエスカレートして……。被害にあったという今年3月に上智大学を卒業した玲奈さん(23・仮名)がおぞましい就活詐欺の一部始終を明かす──。【前後編の後編。前編から読む】
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この夜の後も、玲奈さんは西山を疑うことができなかった。ほとんどの企業は既に採用を終えており、友人が次々に就職先を決めていたことも心を追い詰めていた。
「肉体関係を持った日から、要求はエスカレートした。『新橋でX社の関係者と飲んでいるから』と西山に呼び出され、初老の男性たちの目の前で身体を執拗に触られたこともありました。
初老の男たちが西山を『この人は本当にすごい人だよ』と口を揃える、異様な空間でした」
翌10月に会った時には「君をX社に入れるために役員まで巻き込んでいる」「X社に入りたいなら誠意を見せろ」などと5万円を支払うよう迫られ、玲奈さんは指定された口座にお金を振り込んだ。その口座名義人の名が、冒頭で玲奈さんが黒山署の警察官から告げられたAだった。
「その後、2月にもホテルに呼び出されて再び体を求められ、やはり避妊するそぶりは一切ありませんでした。
西山には『内定しているから3月には入社できる』と言われ、グループ会社の役員の顔を立てるという理由で、また5万円を振り込みました」
しかし4月になっても、玲奈さんのもとに入社の話は届かなかった。
「『5月に延期になった』と言われた後、4月21日を境に西山とはまったく連絡が取れなくなりました。電話をしても発信音が鳴らず、メールも送信できない状態でした」
騙された──そんな疑いを持ちながらも、心身ともに疲弊し行動を起こせなかった玲奈さんのもとに、冒頭の黒山署からの連絡が入ったという。
X社に聞くと、次の回答が返ってきた。
「Aという人物は弊社とは無関係であり、2021年度からCAの採用も行なっておりません。Aが語ったという縁故採用といわれるような雇用形態もなく、採用にあたって応募者の素行を調査することもありません」(広報担当)