「どうやったらモテるのか」聞きたい高校生
政治に関心を寄せる人は決して多くない。有権者の約半数は投票にも行かない。その背景には、誰がやっても同じという諦観がある。また、関心はあっても政治は難しいという先入観から投票しない人もいる。だから、政治に積極的に関わろうとしない。
街頭で政治家に意見・質問できるチャンスがあるといっても、間違ったことを言ってしまって恥をかきたくない。そんな気持ちもあるだろう。これらの理由で、多くの人たちはせっかくの質問チャンスに尻込みしてしまう。
5月27日、乙武洋匡さんが東京都新宿区の高田馬場駅前に姿を現した。高田馬場駅は周辺に大学・専門学校・高校などが多く所在し、学生が行き交う。
乙武さんは16時から街頭演説を始めた。ちょうど学生たちが授業を終えて帰る時間帯と重なっていたこともあり、たくさんの学生たちが乙武さんを見つけて立ち止まって話を聞いていた。
取材中の私の隣にも、学校帰りの男子高校生3人組がいた。彼らは「有名人を生で見たのは、(YouTuberの)ヒカル以来だ」と興奮気味だった。
乙武さんの演説が終わり、ギャラリーからの質問タイムへと移った。たくさん集まったギャラリーから数人が挙手し、乙武さんが順番に指名していく。
その様子を見ていた男子高校生3人組は、「せっかくだから、自分たちも何か質問しよう」と話し合いを始めた。しかし、なかなか政治的な質問が思い浮かばないようだった。それでも、男子高校生3人組は乙武さんについては週刊誌やネットで仕入れたレベルの情報は持ち合わせていたようだ。
傍で彼らの話に耳をそばだてていると、乙武さんが、過去に複数女性との不倫スキャンダルを報じられたことを知っている様子だった。一人の女性と交際するのも大変なのに一度に何人もすごい! とでも思ったのだろうか、「『どうやったら、女性にモテるのか?』という質問をする!」と一人が言い出した。
そこに別の子が、「モテは個人によるところが大きいから、答えられないと思う。だから、ほかの質問にしよう」と提案。そこで、もう一人が「好きなAVを聞くのはふざけ過ぎかな?」と代案を示した。これもネット番組で乙武さんがセクシー女優と共演していたり、そういう作品を見てきたとSNSで率直に語っているのを知っていたのかもしれない。だが、ほかの2人からは、「それは、さすがにふざけすぎだろ」と強い反対が起きた。
高校生が政治家を目の当たりにし、政治に興味を示している。さらに、勇気を出して質問しようとしている。一部始終を横で聞いていた私は、物怖じしないで質問してほしいなと思った。そして「今、国会ではAV被害を救済する新法を議論しているんだよ。だから、AV新法に関連づけて質問をしたらいいんじゃないかな? それに、高校生に対して『くだらない質問するな!』って怒るようなことはないと思うよ」と男子校生3人組の背中を押した。