ライフ

【対談】道尾秀介氏×高橋ユキ氏「犯罪には“明確な理由”が備わっているのか」

犯罪小説の名手である道尾秀介氏(右)と、犯罪ノンフィクションの気鋭、高橋ユキ氏が特別対談

犯罪小説の名手である道尾秀介氏(右)と、犯罪ノンフィクションの高橋ユキ氏が特別対談

 犯罪を描く上で、フィクションとノンフィクションにはどんな違いがあるのか。犯罪小説の名手である道尾秀介氏と、犯罪ノンフィクションの気鋭、高橋ユキ氏が特別対談。高橋氏が脱走犯たちを取材した新刊『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』(小学館新書)を題材に作品論を語り合った。【前後編の前編】

 * * *
道尾:世の中の殺人や暴力、犯罪には「明確な理由」が備わっているものなのでしょうか? 僕はあんまり、そうは思えなくて。実際には、カッとなってやってしまったとか突発的な感情でなく、単純化できない複合的な理由のほうが多い気がします。

高橋:同感です。世間を騒がせるような大きな事件を扱うとき、そこに分かりやすい動機や物語を盛りがちなのは、世間や読者というよりも、ジャーナリズムを標榜するメディアのほうでしょう。

道尾:事件の「物語」を魅力的にすることで、視聴率やページビュー、部数も伸びますしね。例えば市橋達也さんを覚えていますか?

高橋:英会話学校講師のイギリス人、リンゼイ・アン・ホーカーさんを殺害した後、整形手術で顔を変えたり、無人島で暮らして2年7か月も逃げた。2012年に無期懲役が確定しています。

道尾:大阪のフェリー乗り場で捕まったとき、彼は僕の小説『向日葵の咲かない夏』(新潮社刊)を持っていたんです。あの作品は生まれ変わりがテーマのひとつだったので、取材が殺到して。

高橋:そういった状況は、著者としては嬉しいものですか?

道尾:正直にいえば、なんにもないです。マスコミには「自分の作品が、市橋さんの行動に影響を与えたとは考えません」と答えました。

高橋:食い下がる記者も多かったと思います。

道尾:まあ、いかにもなにか言ってほしそうな雰囲気はありましたけど、でも、影響なんかあるわけないんですよ。だって逮捕されたときに本を持っていたなら、まだ読み終わっていなかった可能性が高いわけだから。

高橋:なるほど(笑)。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン