若い頃はスリムな体に憧れて。年を取ったら健康のため。物心ついた頃からずっとダイエットをし続けてきたという人も多いだろう。しかしいま、健康の基準は覆りつつある。悪い肥満だけでなく“いい肥満”もあるというのだ。
“いい肥満”になるには、内臓脂肪ではなく皮下脂肪をためることが重要だという。そのために、脂肪細胞が充分に働くようにすることだ。医療法人康梓会Y’sサイエンスクリニック広尾統括院長の日比野佐和子さんは、まずは食生活を見直すべきだと語る。
「やはり、脂質や糖質が多すぎると、脂肪細胞が蓄えられる脂肪の上限を超えてしまいます。血糖値が乱高下しないよう、毎日できるだけ決まった時間に、ゆっくり時間をかけて食べること。
夜は脂肪が体内に蓄積されやすいので、寝る2時間前までには食事を済ませてください。炭水化物はできるだけ精製度の低いそばや玄米などを選び、野菜やきのこ、海藻類で食物繊維をたっぷり摂るようにしましょう」(日比野さん・以下同)
ただし、極端な糖質制限ダイエットは禁物だ。日比野さんは以前、糖質制限で大幅な減量に成功したが、代わりに著しい体調不良に陥った。
「糖質制限は、必然的にたんぱく質と脂質の摂取量が増えます。すると、白色脂肪細胞から悪玉のたんぱく質であるTNF-αが分泌され、これがインスリンの効き目を悪くします。また、アディポネクチンの働きが悪くなることで血糖値が上昇し、糖尿病や動脈硬化にもつながります」
脂肪を燃焼する褐色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞を活性化させることも重要だ。首や肩甲骨まわりにある褐色脂肪細胞や、白色脂肪細胞に散在しているベージュ脂肪細胞は、冷やしたり運動したりして刺激を与えると活性化することが報告されている。
「運動でイリシンというホルモンが分泌されると、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞に変化します。軽い筋トレやストレッチ、ウオーキングなどで充分。1日1時間、1万歩くらいを目安に歩くのがいいでしょう。